「今年は厳しい」――原監督はそう周囲に語っているという。
3年連続でリーグを制覇した最強軍団に何があったのか?


「今年は厳しい」
最近、巨人軍.原辰徳監督は親しい関係者に、こう漏らしているという。
遡ること3か月。日本シリーズさなかの昨年10月、記者団を前に原監督は、すでに危機感丸出しの過激なコメントを口にしていた。
「チームを解体するつもりで再編成する!」
無理もない。3年連続リーグ優勝は飾ったものの、CSで阪神に敗れて日本シリーズに出られなかった悔しさを晴らすため、今季は"日本一奪回"を期しているはずだが、そう簡単にはいきそうにないからだ。

「原監督は就任以来、今年が一番厳しい戦いを強いられる。"解体"を口にしているのは、その表れです」(ベテランのスポーツ記者)
本誌は先週、ペナント予想で巨人を3位としたが、最近まで巨大戦力と言われた"盟主"に何があったのか。

まずは投手陣から。昨年は打撃十傑に一人も入らないながらも、守り勝ちリーグ制覇。ここが大きな要素であるのは今年も同じだ。
昨季、巨人の先発投手陣で規定投球回数に達したのは、菅野智之、杉内俊哉、内海哲也の3人。
このうち、最優秀防御率(2.33)のタイトルを獲得した菅野はともかく、(1)杉内、内海の先発2枚の衰えが懸念されている。杉内は昨年26試合に登板して10勝6敗、防御率3.16、内海は22試合に登板して7勝9敗、防御率3.17。

巨人軍OBで野球評論家の橋本清氏が言う。
「2人とも、そこそこ頑張っているとは言えますが、高額年俸に見合った働きをしているとは思えません。2人のうち、どちらかが15勝ぐらいしないことには、今年も苦しい戦いが続くことになると思います」
杉内34歳、内海32歳。投手として、微妙な年齢にさしかかった2人にとっては今年が勝負だろう。

さらに、たとえ杉内、内海が額面どおりの活躍をして、菅野、内海、杉内に大竹寛を加えた4人がそこそこ計算できるピッチングをしても、次に控える(2)先発5、6番手がピリッとしないという問題がある。今季は西村健太朗、小山雄輝、宮國椋丞の3人が、その5、6番手候補なのだが、
「伸び悩む宮國と、配置転換の西村には、それほど期待できないのでは」(スポーツ紙巨人担当記者)
と、見る向きは多い。

問題は先発だけではない。(3)中継ぎおよび抑え陣が"勝利の方程式"を作れないのではないか、という問題もある。ここ数年の巨人には、山口鉄也-マシソン-西村とつなぐ"勝利の方程式"が存在した。平均防御率1点台という3人の活躍が、巨人の快進撃を支えてきたわけだが、昨年は方程式が崩壊し、シーズン通算で、この数字が3.23まではね上がった。
「ただでさえ不安なのに、今年は西村が外れて澤村拓一が先発から転向。はたして、この再編成がうまくいくのかどうかが鍵となります」(前出.巨人担当記者)

問題は、誰が最後を担うかだ。山口鉄也は「9回を投げるのは嫌だ」と公言。マシソンか澤村が、クローザーを任されることになる。
「原監督は、短い回なら、澤村の並外れた球威を生かせると考えたわけですが、抑え初体験の澤村がどこまでやれるか、これは一種の賭けですね」(前同)
それにしても、なぜ巨大戦力と称された巨人が選手のやりくりに苦労しているのか。背景には(4)FA、外国人などの補強の大失敗がある。この記者が言う。
「実は、今年の巨人はオリックス金子千尋の獲得を前提に、今季の投手陣の組み立てを考えていました。ところが、金子が残留ということになり、目算が完全に狂ってしまったんです」

金子だけではない。「絶対に取れるはずだった」(前同)DeNAのモスコーソやグリエル獲りにも失敗。捕手は相川亮二をヤクルトから獲得できたが、本命が楽天の嶋基宏だったことは、球界関係者の間では常識だ。
もともと、FAなど他チームの人材に頼らざるを得ないところに問題があるとも言えるが、それは(5)二軍から選手が育ってこない、という巨人の構造的な問題に、そもそもの原因がある。
「他チームがうらやむ素材もいますが、"上"が詰まっていて、なかなか実戦経験を積ませられなかったツケが出ていますね」(前同)

今年の場合、(6)投手陣の女房役たる捕手に不安があることも気になる。
後に詳述するが、阿部慎之助の一塁コンバートの結果、今季の捕手陣は小林誠司、相川の2人を中心にやりくりすることになる。
「小林はリードの面でまだまだ問題が多く、原監督が首を傾げる場面もしばしば。相川はベテランですが、昨年は58試合しか出場機会がなく、一人で144試合任せるわけにはいきそうにもありません」(全国紙運動部記者)

この問題とも深く関連するが、今年の巨人軍の動向を最も左右するであろう大きな問題が、チームの中心、(7)阿部慎之助への不安だ。
前出の橋本氏は、
「阿部の昨年の不調は、首の痛みという問題があったから。それが治った終盤はきちんと成績を残していたので、特に問題はないと思います」
と予測する。負担の多い捕手から、一塁手への転向は阿部にとっては、打撃に専念できる望ましい方向だ。

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