トラック運転手の労働環境が、とんでもなく悪化している。

一昔前までのトラック運転手、例えば長距離トラックの運転手の仕事内容は、一言でいってしまえば、トラックの運転手役にほぼ限定されていたといっていい。ところが、ここ最近のトラック運転手には、本来なら仕事外となるはずの荷物の積み下ろし作業までも要求されるようになったのだという。

その背景には、運送会社そのものの経営状態が極めて厳しい状況に置かれているという実情がある。‘14年後半からガソリン価格が大幅に低下したが……。

「燃油代が急騰していた際には、倒産や廃業に追い込まれる運送業者が続出していました。それというのも、燃油代の上昇分がまったくといっていいほど運送価格に転嫁できなかったからです。景気低迷のあおりを受けて荷主も、運送価格の上昇には全く応じようとしませんでしたし、トラック運送業界内の過当競争もあって、運賃はむしろ下がっていったのです」(中堅トラック運送会社社長)

結果的に、そのしわ寄せは、トラック運転手に向かうこととなった。

例えば、ほとんど休息なしに24時間連続運転を強いたり、東京ー大阪間を走るのに、高速道路の使用を認めず、一般道の走行を強制したり(高速料金を節約するため)、ともかくトラック運転手を酷使することで利益を出そうとしたのである。

しかしこのことによって、交通事故及び交通違反が激増するという状況を招いてしまったのである。

「このためトラック業界は、警察サイドから睨まれることになったのです。まさに、負のスパイラル状態に陥ってしまったといえるでしょう」(前述の中堅トラック運送会社社長)

しかし、だからといってトラック運送業界におけるダンピング合戦(値引き競争)は、まだまだ収まる気配が見えない。

トラック運転手の過酷な労働実態は、まだしばらく続きそうだ。


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