入居者を追い出す老人ホーム

現在、寝たきりの生活を送っている安田澄子さん(75)は、こう打ち明ける。
「体が弱ってきたので、長年住んでいた賃貸アパートを出て、老人ホームに入居することにしたんです。ところが入居中に、病気で寝たきりになりまして」
そのホームは、寝たきりの場合は入居できない条件なのだという。
「条件については了承していたので、ホームを出されることに異存はありません。問題は、1000万円の入居一時金が、たった半年暮らしただけで、一銭も戻って来ないことです。老後の財産のほとんどをつぎ込んでしまったので、今後、どう暮らせばいいのやら」

国民生活センターによれば、有料老人ホームの約7割が月々の賃料とは別に入居一時金を徴収している。
「そのうちの15%は、退去時に入居一時金を一切返還していないといいます。その分、賃料を安く抑えていると主張する会社もありますが、実態は不透明です」(前出・全国紙記者)

さらに、「悪質な例では、入居者を意図的に要介護状態にさせ、入居一時金だけ奪って、追い出すホームもあるようです。自力で歩ける高齢者にも、強引に車椅子を使わせ、筋力を落として、要介護にさせるといいます」(前同)
財産のみならず、命まで危ないのだ。
また、持ち家を"終(ついえ)の住処(すみか)"と決めた際に注意したいのが、テレビCMでもよく目にする"リバースモーゲージ"だ。
「自宅を担保にお金を借り、死後に売却して返済するのが基本的な仕組みです。借入金で旅行三昧できるなど、夢のあるサービスで、銀行や大手住宅メーカーが手掛けています」(情報誌記者)

某地方都市に住む佐藤敏夫夫妻(70代)は、これに手を出したばかりに、大変な目にあったという。
「一括で限度額まで借りたところ、自宅の担保価値が下がったとして、その差額300万円を請求されたんです。余裕がないから借金しているのに、払えるわけがありません」(佐藤さん)
自宅が抵当に入っているため、まだ元気なのに、家から追い出されるという危機に瀕している。
犯罪社会学を研究する、国士舘大学大学院の加藤直隆教授は、こう注意を促す。
「本当にオイシイ話なら、人には勧めません。最近では、東京五輪に便乗した儲け話など、老後マネーを食うネタは時流を見て、次々に登場します。大手銀行にしても、かつて"変額保険"なるものを売りまくって多くの被害を出したように、一流と言われる企業だって信用はできません」

一歩間違えば一文無し。老後マネーを狙うワナは、かくも恐ろしいのである。

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