ビール系飲料「極ZERO(ゴクゼロ)」が『税率が低い“第3のビール”にあたらない可能性がある』と2014年6月に国税局に指摘され、“発泡酒”の税率との差額を納めたサッポロビールだったが、社内の検証で『“第3のビール”に間違いない』という確信を得たため、今年1月26日付けで税金115億円の返還を求めている。

「極ZERO」とは、サッポロビールが約4年もかけて開発した、世界初の『プリン体ゼロ』の“第3のビール”だ。
2013年6月の発売後、当初の計画を6割上回る好調な売上げを見せ、国内のビール系市場でのシェア4位に甘んじていた同社にとって、新しい主力商品として期待されていた。

しかし、国税局の指摘を受け、2014年5月製造分で“第3のビール”としての「極ZERO」の販売は打ち切りとなってしまった。同年7月15日には、製造方法を一部見直し、価格が20円ほど高い“発泡酒”として再発売したが、他メーカーが後追いで発売した『プリン体ゼロ』製品の中に埋もれる結果となってしまった。

そもそも“第3のビール”はビールメーカーに対する、国税局の苛烈な仕打ちによって誕生したものだ。1990年代後半から、税率がビールよりも低いため低価格を実現した“発泡酒”が売れ行きを伸ばしてきていたが、2003年の酒税法改正によって税率が引き上げられた。この改正にともなう値上げのため、消費者離れを懸念した各メーカーは、苦肉の策として麦芽以外の原料を使用したり、別のアルコール飲料を混ぜて作った新しいビール系飲料、“第3のビール”を開発したのだ。

しかし安さが魅力の“第3のビール”が“発泡酒”のシェアを奪っていくと、税収不足に苦慮していた国税局は、2006年5月に“第3のビール”に改正酒税法を施行して、なんと350ml缶で3.8円の増税をしてしまう。
この改正は、従来の“第3のビール”の原料や製法を用いた以外の発泡性のあるアルコール度10未満の酒類にも、ビールと同額の高い課税をするとしたため、新たな“第3のビール”が誕生する事は現実的に難しくなってしまった。

そんな厳しい状況の中、サッポロビールが価格以外の魅力を生み出そうと苦心の末、ようやく開発したのが「極ZERO」だったのだ。指摘を受けていた当初から、国税局の酒税法に関する法令解釈には疑問が持たれていたという。ぜひともサッポロビールには頑張ってもらい、税金の返還、そして「極ZERO」の“第3のビール”としての復活を願いたい。

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