怒りのオバマ大統領根絶宣言も… 米軍空爆2000回でも「奪還領地1%」

新興の過激派組織が"国家樹立"を宣言したのは昨年6月のこと。その1か月後から米軍主導で空爆が開始された。しかし、その"効果"はというと……。

「空爆だけでイスラム国を壊滅させることは、絶対に不可能でしょうね。また、どんなに気をつけていても、空爆には誤爆がつきものですから、無辜(むこ)の市民が巻き添えになる。そうなると、イスラム社会はもとより、国際世論の反発を招くことになるでしょう」(軍事ジャーナリスト・井上和彦氏)

米国のオバマ大統領がイスラム国に対する空爆という軍事オプションを決断したのは、昨年の8月のこと。
「イスラム国の軍隊が、イラク北部のクルド人自治区に侵入したため、限定的に空爆を承認したんです。1か月後にはシリア領内に空爆を拡大、フランス軍、イギリス軍も空爆に参加し、現在も継続されています」(全国紙外信部記者)

日本人2名を拉致し身代金を要求が出されたのを受けて、オバマ大統領の怒りは頂点に達した。米両院合同議会で、「イスラム国を根絶する」と演説してみせた。

現時点で、米軍と有志連合軍による空爆は2000回近く行われている。
「駐イラク米国大使は、"これまでの空爆で6000人を超えるイスラム国戦闘員を殺害し、その約半数は指揮官だ"と発表しました。米情報機関が算出したイスラム国の総兵力は2万人弱とされていますので、これは大きな成果です。ただ時をほぼ同じくして、米国防総省から"空爆開始から約5か月で、イスラム国に占拠された地域のうち、奪還できたのはわずか1%"と公表があったんです」(通信社記者)

やはり空爆だけでは、限界があるようだ。前出の井上氏が言う。
「空爆で戦闘員を失っても、"義勇兵"が世界中からやってくるので、すぐに補充できる。彼らの戦い方は、究極的には個人戦。個々の力を高める訓練は、教官が一人いればいくらでもできるので、空爆だけで戦力をそぐことは難しいでしょう」

米軍と有志連合軍は今後、イラク政府軍の指導、シリアの穏健な反政府軍の指導を通じて、地上部隊を組織する方針を打ち出している。
「イスラム国の資金源である原油価格が暴落している今こそ、彼らの息の根を止める好機。特殊部隊を含む地上部隊を速やかに派遣する必要があります」(前同)

空爆だけでは、何年かかっても彼らを"根絶"することはできないようだ。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4