人生に役立つ勝負師の作法 武豊
さあ、いよいよキズナの復帰戦です


今年は、グァンチャーレをパートナーに、1月11日に行われたGⅢ「シンザン記念」で優勝。デビュー以来続いていた重賞の連続勝利記録を29年に伸ばし、1月25日、コパノリッキーとコンビを組んだGⅡ「東海S」も、2着以下に4馬身の差をつけての圧勝。ジョッキーとしては、最大でも6つしか勝つことのできない重賞のうち2つを手にしたのですから、まずまずのスタートと言ってもいいと思います。

さあ、そして今週は――
みなさんお待たせいたしました、いよいよ、キズナの復活です。
振り返ってみると、去年は、キズナと僕にとっては、あまりいい年ではありませんでした。

大いなる目標、「凱旋門賞」に向けた年明け初戦、GⅡ「産経大阪杯」こそ、彼らしい競馬で完勝したものの、続くGⅠ「天皇賞・春」のレース中に左前脚を骨折。長期休養を余儀なくされてしまいました。

しかも、キズナにつきあうように、7月には僕も落馬骨折……レース復帰後も、どこがどうというわけではなく、なんとなく雰囲気が悪いまま一年が終わってしまいました。
いつも通り、すべてのレースを勝つつもりで乗っているのに、どこか、なぜか、歯車がかみ合わない――こんなに歯がゆい思いをしたのは、騎手になって初めてです。もちろん、プロのジョッキーとして褒められることではありません。

この負の連鎖を断ち切るために、心の中に掲げたのは再出発――すべてをゼロに戻し、新しい武豊として出直すことでした。
その結果が、重賞2勝という数字で現れたことを、素直に喜んでいます。そして僕のこんな気持ちに合わせるように、キズナもターフに帰ってきてくれました。しかも、以前より一回り大きく、たくましくなって。

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