[プレイバック週刊大衆]
1958年に創刊された「週刊大衆」のバックナンバーから、過去の記事をピックアップしてお届けする企画。今回は「週刊大衆」昭和60年2月25日号の記事をお届けします。 *注:文中の(ビ)(金)は掲載時、マル囲み表記です。


銀座、吉原、整形外科、中古車市場…渡り歩いた結論は?

ちょいと前なら“飲む打つ買う”も十分可能だった一万円。が、いつの間にやら値打ちは下がりっ放しで、いまや“三拍子”はおろか、ひとつだってとんと危うい始末。いまどきの一万円札一枚、はたしてどんな効き目があるのか。なんぞOKと出るか、はたまたKOか? いざトツゲキ!


かの『金塊巻(キンコンカン)』“(ビ)ルポライター編”のモデルではないか、と噂される三人の独身記者が、わずか一万円ポッチをサイフへ入れ、このクソ寒い夜の街へ出陣したのでありマス。
愚かにも、(ビ)一号は超高級クラブヘ、(ビ)ニ号はソープランドへ、はたまた、(ビ)三号は包茎手術へと駆け出すというズウズウしさ。金銭感覚のない人は強い!
エエカッコしいの自称「神田正輝」記者(35)が地下鉄・銀座駅に降り立ったのは金曜日の午後八時半。そもそも、地下鉄に祭って銀座のクラブへ行く……あたりに(ビ)の悲しい性(サガ)があらわれていますネ。

よせばいいのに、神田記者、なんの恥じらいもなく、かの『J』に入っておったのでありマス。お~っと、扉を聞けた神田記者の目の前に広がる景観は、この世のモノかと目を疑う美しさ。そして二十世紀のクレオパトラか楊貴妃か、はたまたマダム楊かと見まちがえんばかりの”絶世の美女”ぞろい。
「いらっしゃいませ」
というホステスたちの声にも応えず、(ビ)記者は上野駅に降り立った家出少年のように、キョロキョロとあたりを見まわすのでありました。なにせ、生まれてこのかた、クラブなんぞとは緑のない人生を送ってきた人物なのです。
「ナンでございましょう?」
カウンター回しに、男の冷ややかな声が聞こえるではありませんか。さすが、エエカッコしいの記者も、あせってしまい、
「えーと、イ、イ、一万円しか持ってないんですが……」
と、どもりながら話すのでった。
「一万円!? それじゃ無理ですよ」
カウンターの兄さん、顔はニコやかに微笑んでいるのでありますが、なんとなく記者をバカにした目付きで、あっさりいい放つのでありマス。ああ無情。
しかし、黙って引き下がるほどヤワな男ではありません。かつて劇団『四季』のオーディションを受けたこともある神田記者〈もちろん不合絡〉、一世一代の大芝居を打つのでした。
「私は初めて銀座に来たのです。明日は八戸へ帰り、親父の跡を継いで畑を耕さなければなりません。せめて、その前に東京での思い出として高級クラブの雰囲気を味わいたいのです。立ち飲みでもいいですから……。グラス五分の一でもいいですから……」
カウンターの男、“なるほどなァ~”“ なるほどなァ~”とうなずくのでありました。
〈おっと、一杯くらい飲ましてくれそうだなや〉
と内心ニンマリとした(ビ)記者に返ってきた言葉は……。
「気持はわかりますけど、ウチじゃ、そういうのやってないから」
〈この野郎~、ビンボー人を差別すんなヨォ!〉
といい放ちそうになった神田記者だが、ここは、ぐっとこらえ、
「じゃ、いくらあれば飲ませるんだい!」
とパンチパーマを突き出すようにして、反撃。
〈むむむ。こいつヤ組の人かな? にしては迫力ないな〉
と一瞬にして判断したカウンターの兄さん、すかさず、
「一見(いちげん)のお客さんは、みんなお断わりしていますので……。申しわけありません」
と切り返してくるではないかいな。これではいけません。ジ・エンド。
しかし、東北人のねばり腰、
〈『J』がダメなら、『H』があるさ〉
と気合を入れ直すのでありました。
ところが、“H”にいたっては店内に一歩も踏み入れることなく追い返されるしまつ。
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