超高齢化社会の日本を考える上で、決して他人事ではない"国民病"。健康で明るい未来に備える術を知っておこう!

65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症に――1月27日、厚生労働省が発表した「認知症施策推進総合戦略」の予想は、まさに"衝撃"だった。

「厚労省が2013年度から進めていた"認知症施策推進5か年計画"に代えてまでも急いで出してきたのが、この戦略です。その推定によると、10年後には、認知症の高齢者は約700万人に達し、実に、高齢者の5人に1人にもなります。さらに、そのまま推移すれば、60年には3人に1人という試算もあるほどです」(医療ジャーナリスト)

まさに"国民病"とも言える認知症だが、そもそも認知症とは、病名というよりは症状の総称であり、いくつかの種類があることは、あまり知られていない。東京医科大学の羽生(はにゅう)春夫教授が解説する。
「最も多いのは"アルツハイマー病"で、認知症全体の6割程度を占めます。次に多いのは、脳卒中の後遺症の"脳血管性認知症"と、幻視やパーキンソン病の症状を伴う"レビー小体型認知症"で、それぞれ15%を占めています」

現状の医学をもってしても、根本的に認知症を治す薬は存在しない。しかし、元アメリカ・イリノイ工科大学の助教授で、『ボケずに健康長寿を楽しむコツ60』(角川書店)の著書もある生田哲(いくたさとし)氏(薬学博士)は、決して対策がないわけではないという。
「かつてアルツハイマー病は、高齢者の脳に、突然、壊滅的ダメージを与える病気と考えられていました。しかし今では、がんや脳卒中などと同じで、高血糖や高血圧などが引き起こす生活習慣病の一種であるということ、また、症状が日常行動に現れる前に、軽度認知症(MCI)という状態が約10年間にわたって存在することがわかっています」

つまり、40~50代の頃から、さらに言えば、MCIになってからでも、日常生活においてさまざまな予防をすれば、進行を遅らせたり、深刻な認知症になったりすることを防げるのだ。

そこで、本誌は、専門医監修のもと、手軽かつ簡単に診察ができる「認知症予防セルフチェックリスト20」を作成した。まずは以下のリストにしるしをつけてみよう。

リスト
仮に10項目以上にチェックがついたら、現時点では認知症になる可能性は低い。逆に9項目以下なら、認知症予備軍、すなわち、症状が現れる時期が早まる可能性がある。
チェックリストでは日常生活を5つのジャンルに分類してある。それぞれを検討して、認知症予防につなげよう。

まずは、衣食住の中でも一番重要な【食生活】だ。
羽生教授によれば、「米やパンなどは、中性脂肪の元になります。特に、血糖値が高めの人は炭水化物を控えるようにしてください」とのこと。
内臓肥満、高血糖、高血圧といった要因は、脳血管性認知症だけではなく、アルツハイマー型認知症の重大な危険因子となるからだ。

また、肉・魚・野菜のバランスが取れた食事も大事。
生田博士によれば、特に「カレー、リンゴジュースがお薦め」だという。
「カレーの黄色の元であるウコンの主成分であるクルクミンは、アルツハイマーベータ病を引き起こすβ-アミロイドの蓄積を防ぐことがわかっています。リンゴジュースは、アルツハイマー病の症状を改善するアセチルコリンという脳内伝達物質の分解を抑制する効果があります」

一方、日本医師会認定産業医である下村洋一氏は、飲酒について解説してくれた。
「適量は日本酒なら1合、缶ビールなら1本。でも、一度飲み出したらそんな量ではすまないはずですから、できるだけ"休肝日"を多く設けるように心がけるのが現実的かもしれません」
お酒を飲むときも、ツマミはよくかんでゆっくり食べるべし。早食いを防げば、メタボ予防にもつながる。

【日常生活】において、やはり重要なのは睡眠だ。
休みの日に寝すぎたり、無理な徹夜をしたりせずに規則正しい睡眠を心がけることで、心身のバランスが保たれる。
睡眠は、時間帯だけでなく、その長さも重要だと、羽生教授は言う。
「極端に短眠の方は、認知症になりやすいとされます」
なぜなら、寝ている間に、脳内ではアルツハイマー病の原因となるタンパク質が減少していることが確認されているから。そのため、平均6.5~8時間の睡眠が理想的となる。
また、
「寝る前に歯磨きが重要なのは、よく知られていますよね。朝晩、または毎食後の歯磨きは本当に大事です。歯磨きを怠ったせいで入れ歯になると、食事も十分にかめなくなります。そうなると、脳への刺激も弱まり、老化にもつながります」(歯科衛生士)

休日前に深酒して歯磨きせずに昼まで爆睡……なんてことのないように!
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