三日月宗近、小狐丸、和泉守兼定、同田貫正国……。
これだけ聞いてピンときた人はどれくらいいるだろうか。実はこれ、すべて実在する日本刀の名前なのだ。

いま出版界では空前の「日本刀」ブームが沸き起こっている。本来はマニア向けで地味な存在の日本刀関連書籍が、最近になって数十万部とバカ売れしているのだ。

なぜ専門家やマニアしか読まないような本が急に売れ始めたのか、業界関係者は原因を掴みかねて首をひねるばかりだったが、ネット上ではその盛り上がりの理由はいち早く特定されていた。

それが『刀剣乱舞-ONLINE-』というオンラインゲームだ。運営しているのはDMMで、話題の大人気ブラウザゲーム『艦隊これくしょん~艦これ~』でもおなじみの会社だ。

『刀剣乱舞』は日本刀を擬人化した女性向けのシミュレーションゲーム。実在の名刀をハンサムな男性キャラに置き換えて、彼らを成長させていくのが目的となっている。実在の戦艦を女性キャラに置き換え、オタク男子の心を鷲掴みにした『艦これ』と同じパターンだ。

このゲームに、「腐女子」と呼ばれるBL(ボーイズラブ)好きの女性たちがいっせいに飛びついた。BLとは男の子同士の恋愛を題材にして楽しむジャンルのことで、BL好きな女性のことを「腐女子」と呼ぶ。

最初から男同士の愛がテーマになっている漫画・小説やアニメもあるが、妄想の中で勝手に男性キャラ同士の恋愛を作り上げることも彼女たちの嗜好のひとつ。そのため『進撃の巨人』『弱虫ペダル』といった普通の人気作品でも、腐女子たちの大好物となっている。

この『刀剣乱舞』の場合は、最初から腐女子を狙い撃ちしたともいえるゲームだが、その作戦は見事に的中。一時的に新規ユーザー登録が制限されるなど大反響を呼んだ。そして、このゲームで日本刀に興味を持った腐女子たちが、もっと知識を得ようと一般の日本刀書籍を買っているというのが、今回の日本刀ブームの真相なのだ。

ところが、日本刀の専門家の中には『刀剣乱舞』のことをまったく知らずに、「ようやく日本刀の美しさが世間に認知された」と勘違いの分析をしてしまう人もいるようで、ネット上では逆にネタとして扱われてしまっている。

以前、戦国武将好きな「歴女」が増加したときも歴史関連の書籍が売れたことがあったし、「韓流」ブームでも韓国グッズがバカ売れした。何はともあれ、ブームを作り出す女性のパワーは恐るべし!?

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