農業というより金融会社…
実はとっくに農協は崩壊していた!?


日本の農業の発展のために法的にも手厚く守られてきた農協。しかし、その実態は"理想"とはかけ離れたものだとする指摘も!!

「今回のJA全中の地域農協への監査権限廃止は、わが国の農業再生に向けた一歩前進ではあります。しかし、JA全中の下部組織で、都道府県ごとにある都道府県中央会を残したことは問題。これまでどおり、ここを通じて地域農協から賦課金も徴収でき"政治力"を発揮できます」
と、改革はまだまだ緒についたばかりと言うのは、農水省キャリアOBで、『農協解体』(宝島社)などの著書がある山下一仁(かずひと)氏だ。

農協の最高司令部である「JA全中」は、その下に「都道府県地方中央会(47)」、市町村レベルの「総合農協(約700)」を通じて、約1000万人の組合員を指導してきた。農家と直に接する総合農協は、1960年には1万2000以上もあった。それが現在では700程度。なぜ、激減したのか?

山下氏は、信用(銀行)や共済(保険)事業の効率化を図り、合併を繰り返した結果だと言う。
「今や、組合員の6割近くは農業とは無縁な地域住民の准組合員。JAは彼らに向けた住宅や自動車ローン事業などを行っています。JAバンクは今や、わが国で預金量2位のメガバンクですが、農業への融資は、その1~2%に過ぎません」
要するに、農協はとっくに"農業のための組合"ではなくなっているという。

「問題なのは、正組合員の大半が農業だけで生計を立てている主業農家ではなく、兼業農家であること。ですから必然的に、農協はそうした兼業農家の利益団体になってしまっていることです」(農水省関係者)

山下氏によれば、農協がTPPに反対しているのは「国際価格よりも高い米価を維持する」ため。そうしないと、米作を主とした日本農家の7割を占める兼業農家は廃業してしまうだろう。すると、准組合員とともに、主力の預金者である兼業農家の預金が逃げる。
農協の政治力も低下する。
「ですが、兼業農家が廃業すれば、大規模農業が可能になり生産性が向上し、価格が低下し、国際的な競争力がつきます。消費者も利益を受けます。農業の発展を犠牲にして、組織の利益を追求している農協のあり方には、問題があると言わざるをえません」(山下氏)

政府が改革を進める理由も理解できる!?

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