「健康は第一の富である」と言ったのは、米国の思想家・エマーソン。お金がなくてもその「富」は手に入れられる!

元気にトシを重ねたい――50歳を過ぎれば、誰もが願う老後の健康。
どうしたら、がんや認知症などの病気と無縁の生活を送れるのだろうか。
不安多き中高年のため、本誌は「健康のプロフェッショナル」に助言を仰いだ。名医5人が日々、自ら実践している、誰でも簡単に真似できる「最強健康法」をお伝えしよう。

近年、患者の急増ぶりに国を挙げての対応が求められている認知症。厚労省の推計では2013年現在、65歳以上の認知症患者数は約462万人で、2025年には700万人を超えると試算している。
「俺がボケたり、あるいは女房のほうがボケたら……」
誰もが心のどこかに、そんな不安を抱いていることだろう。

アンチエイジング研究で知られる順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授の白澤卓二氏が、認知症の予防や症状改善に期待できる健康食材としておすすめするのが「ココナッツオイル」だ。
ココナッツオイルは、ココヤシの成熟した果実の種子から取れる油で、飽和脂肪酸の一種。血液中に悪玉コレステロールを増やし、アルツハイマー病の発症リスクを高める牛や豚などの動物由来の飽和脂肪酸と異なり、植物由来のココナッツオイルには逆に認知症の症状を緩和、改善する効果があるという。
「私が実践している健康法の一つが、毎日、ココナッツオイルをコーヒーに入れて飲むことです」(白澤氏=以下同)

アルツハイマー病を主とした認知症は、脳の神経細胞の障害により引き起こされるとされる。
神経細胞は本来、ブドウ糖をエネルギー源にしているが、認知症になると、それが使えなくなり、さまざまな認知障害が生まれる。
「ココナッツオイルに含まれる飽和脂肪酸は主に中鎖脂肪酸で、これは肝臓でケトン体という物質に変換されます。このケトン体が神経細胞内でエネルギー源に変わり、働きを止めていた細胞を再び働かせてくれます。これが、認知症の予防や改善につながるんです」

ココナッツオイルは独特の匂いがあるが、工夫すれば、それもさほど気にならないという。
「1杯分のコーヒーに15ccほど入れて、ミキサーにかけるのがおすすめです。こうすることで乳化し、カプチーノのようになって、おいしく飲めます。もしコーヒーが苦手ならば、豆乳と混ぜて飲んでもいいでしょう。効果はおよそ3~5時間ですので、朝昼晩と1日3回これを飲めば、起きている間、脳のパフォーマンスを高められます。摂りすぎると、人によってはお腹がゆるくなる場合もあるので、体調とも相談しながら、ご自身の適量を探ってみていただきたいと思います」
また、これとは別に白澤氏が毎日、口にしているのが「カンタン野菜・果物ジュース」だ。

「もう一つ、認知症やガンの予防としておすすめしたいのが、朝1杯の野菜・果物ジュースです。冷蔵庫にある野菜をミキサーに放り込んで飲めばいいだけですが、理想は葉っぱもの+野菜+果物1種類の組み合わせ。これにコップ1杯の水や豆乳をプラスしてミキサーにかければOK。私も、小松菜+セロリ+リンゴに豆乳を入れて飲んだりしています。毎日、これを飲めば、体の免疫力と抗酸化力を高め、認知症のリスクを75%、ガンのリスクを50%も下げてくれます」

食べることは生きることに直結しているが、その際に気をつけたいのが噛むこと=咀嚼(そしゃく)。人間にとって咀嚼は、肥満防止や痴呆の予防など、心身を健康に保つための重要な役割を果たしている。
「よく噛むことが究極の健康法」を実践するのが、元神奈川歯科大学教授の齋藤滋氏だ。
「80歳を過ぎた現在も、私は1口30回、一食当たり1500回噛むことを目安にしています。おかげさまで、今でも歯は丈夫ですし、いたって健康です。ところが、最近の親は逆に"早く食べて(塾へ)"が口癖。食のしつけが、すっかり喪失してしまっています。"食のしつけ"を復活させれば、わが国の医療費は半減すると思いますよ」(齋藤氏=以下同)

齋藤氏によれば、よく噛むと満腹中枢を刺激して"お腹がいっぱいになった"と感じて、食べ過ぎを防ぐだけでなく、体脂肪の分解を促進して肥満を防いでくれるそうだ。
逆に、相撲取りは、わざと太るために食事を飲み込むように食べるという。
「私が学生たちと時代ごとの食事を再現して実験したんですが、弥生時代の1回の食事で噛む回数は約4000回でした。これが戦前は約1500回に、そして現在は実に約600回にまで減っています」

もっとも、だからといって、いきなり噛む回数を増やしても、急性顎関節炎になる危険性もある。齋藤氏がまずおすすめするのが、噛む練習だ。
「水を口に含んで上を向き、のどから食道に流れないようにのどを閉じ、水を飲み込まないように水を噛んで慣れてください」
ここから少しずつ、噛む習慣を身に付けていただきたい。

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