米を激怒させた韓国二股外交

ベストセラー『悪韓論』などで知られるジャーナリストの室谷克実氏は、韓国政府の対応の差について、こう言う。
「韓国は日本をなめている。日本など、どう扱っても怒ってこないけど、アメリカは怒らせたら大変だと、政権も国民も承知していると、そういうことですよ」

まさに、「日本に強くてアメリカに弱い」韓国。米大使襲撃事件を機に、ことさら親米ぶりをアピールするのには深いワケがある。
「実は、最近の朴大統領の中国寄りの外交路線がアメリカの逆鱗に触れ、米国政府内で韓国に対する怒りの声が噴出。これを受け、"このままではアメリカに見捨てられる"と韓国は戦々恐々としていたんです」(外務省関連スタッフ)
とはいえ、これも因果応報だろう。

朴政権は発足当時の13年、驚異の経済成長を遂げ、昇り竜の勢いだった中国に"勝ち馬に乗れ"とばかりに急接近した。
「朴大統領は、米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げたFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の積極支持を表明しています。ほかにも、日米が力を持つADB(アジア開発銀行)に対抗して中国が計画するAIIB(アジアインフラ投資銀行)にも賛意を示しています」(前同)

中国に、尻尾を振りながらすり寄る韓国。だが、やはりアメリカなしでは、国家として存続していけない。
「米韓両軍の作戦統制権を持つ在韓米軍司令官が、協定の期限が切れたとして統制権の返還を韓国に通達。普通の国家元首なら、これで"自主防衛""名実共に(米国からの)独立"と喜ぶのに、朴大統領はまったくの逆。"捨てないで!"と米軍に泣いて縋り、無期限延期を懇願したんです」(防衛省関係者)

国際問題評論家の小関哲哉氏が言う。
「韓国の正面には、主敵・北朝鮮が構えており、軍事的に自立は無理との判断からでしょう」
中国に軸足を置きながら、アメリカの軍事力も欲しい韓国。まさに"二股コウモリ外交"なのだ。

しかし、ここ最近、韓国内への米ミサイル防衛システム"サード(THAAD)"の配備を巡って、米中が対立。韓国は両国の板ばさみになっているのだ。
「朴大統領は当初、北朝鮮からのミサイルを迎撃する目的で配備される"サード"に賛意を示していました。しかし、その防衛システムの範囲内に中国領土も含まれるため、中国から"受け入れるな"との要請があったんです。朴大統領は、いまだに最終判断が下せていません」(前出の外務省関連スタッフ)

コリア・レポート編集長の辺真一氏はこう説明する。
「サード配備を巡って、現在、朴大統領は米中両国から"米中、どっちにつくんだ"との踏み絵を迫られています。身から出た錆とはいえ、今後、朴政権はこれまでのようなコウモリ外交では処理できない厳しい判断を迫られるでしょう」
中国の経済発展にあやかりたいが、いつバブルがはじけるとも知れず、"両足"は突っ込めない。借金まみれゆえ、自前の専守防衛など叶うはずもなく、アメリカへは"土下座外交"で、虎の威を借りたい――このご都合主義が「アメリカに弱い」本当の理由なのだ。

一方で、利用できるはずの日本にはまったく頭を下げる素ぶりもない朴大統領。
「ソウル五輪をはじめ、各種のODA(政府開発援助)などで、日本から韓国へは数千億円単位の援助金が送られてきた、という歴史があります。米中との板ばさみであれば、日本に助けを乞うというのが、地政学的な観点からも現実的な判断として想定されますが、そうはできないのが彼女なんです」
と、苦い表情で語るのは、全国紙政治部デスク。

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