お花見シーズンも後半になると、悩ましいのは花を散らす雨や風だ。場所取りや料理や酒を用意する役を任されたりしたら、天気予報が気になってしょうがないだろう。

そんな桜の花を散らす雨や風のことを「花散らし」と、いかにも風流な表現として使ってるニュースを耳にしたり、自分で使ったことがある、なんて方はいないだろうか。実は「花散らし」という言葉、この場合は誤用なので要注意だ。

「花散らし」とは日本古来の言葉で『旧暦の三月三日に花見をして、翌日若い男女が集会して飲食すること』という意味。旧暦だから、現在だと三月の末、まさにお花見の真っ盛りの頃だ。

ここで『やっぱり、お花見に関係した言葉じゃないか』なんて短絡的に納得してはいけない。なぜ、お花見をして、翌日にあらためて飲食しているのか? 花を見ながら飲食すれば一度にすむではないか。この「花見」と「飲食」を分けて行うことが問題なのだ。

三月三日にお花見をする、そして、翌四日に直会(なおらい)的に飲食する。今でいうところ合コンみたいに、若い男と女が酒を飲み、盛り上がってきた頃に日が暮れる。そこでナニをいたすのか? 野暮な方でなければ、お察しだろう。暗くなった宴会場のアチラコチラで求愛行為が始まりだし、いつの間にか乱交パーティーになっていたのだ。つまり、散るのは桜の花ではなく、若い男女の性欲だったというわけ。どちらかと言えば、散っていたではなく、舞っていたと呼びたい光景が繰り広げられていたのだろう。

もし花見の時に桜の花が散って地面が薄ピンクに染まっていたら『葉桜もオツなもんだねえ』なんて強がりを言いながら、こんなトリビアで面目を保ってみてはいかがだろうか。ただし、セクハラにならないよう気をつけて……

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