今から10年前の2005年に開催された『愛・地球博』。この時に話題になった展示物のひとつにマンモスの冷凍標本があった。この当時からすでに期待され、研究が進められてきたのが冷凍標本のDNAをコピーし、クローンマンモスを生み出すことであった。当時は未来の話と思われていた “マンモス再生”であるが、ここに来て現実味を帯びてきたようだ。というのも、北極に保存されていたマンモスのDNA構造を調査しているアメリカ・ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授が、14個の遺伝子を完全コピーすることに成功したのである。

ジョージ教授は遺伝子研究で世界的に有名な学者であり、数年前にネアンデルタール人のDNAを再構築してクローンを出産する現代人の母親を探したことでも有名な人物。教授が利用した“Crispr”という新手法は、DNAに正確な変更を加えることができるもので、これによって象のDNAの一部をマンモスの遺伝子に置き換えることに成功した。発毛、耳のサイズ、皮下脂肪のほか、重要なヘモグロビンなどの耐寒性と関連した遺伝子を優先したという。なんとこれらのマンモスのコピー遺伝子は、象のゲノムに組み込まれても通常のDNAと同じように機能するのだ。これにより、絶滅したマンモスがクローンとして復活する可能性が、グンと高くなったのである。

そもそもクローン動物の誕生は、1996年にイギリスで「ドリー」と名付けられたクローン羊が最初だった。当時、ニュースで大きく取り上げられたので、記憶に新しいことだろう。日本では1998年に2頭のクローン牛が誕生。その後も研究が重ねられ、今回のような絶滅種の復活にその技術が用いられようとしているのだが、反対の声も多い。
モラルの問題もあるだろうし、数千年前に絶滅した動物よりも、現存する動物の保全に資金を投入するべき、という意見だ。最先端の技術で絶滅した動物を再生させても、見せもの以上にはならない。人類のために有効活用するべきと思うのだが、いかがだろうか?

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