ロンドン警視庁内には黒博物館(ブラック・ミュージアム)と呼ばれる犯罪資料館がある。そこには、過去140年間の犯罪の証拠品や現場写真などが保管されているのだ。
それらは、警察の専門家や一部の研究者などしか、見ることはできなかった。しかし、ロンドン博物館に展示して一般公開することになった。中でも興味深いものをいくつかご紹介したい。

ストラットン兄弟のマスク

1905年、ストラットン兄弟は、塗装店を経営する老夫婦を殺害したとして起訴されていた。目撃者はわずかに数人、かろうじて塗装店の金庫に兄弟の指紋が残されていた。
この当時、指紋は犯罪の証拠とみなされていなかった。ところが、検察はこの裁判で兄弟の指紋を犯罪の証拠として提出したのである。

果たして、指紋が有力な証拠として認められるのか? 各国の警察も裁判の行方に注目していた。

結果は有罪判決。兄弟は裁判から18日後に絞首刑になった。

この裁判以降、指紋は有力な証拠とみなされるようになっていく。ロンドン博物館では、犯罪史に足跡を残したスラットン兄弟が犯行時につけていたマスクを展示する。

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