3本の矢が日本を救う――この言葉を信じた国民を翻弄する真実。矢は眠れる獅子を起こして、折れてしまったのだ!

現在、日経平均株価が驚愕の伸びを見せている。
「1月5日の終値で1万7408円71銭だった株価は、3月23日に1万9778円60銭と2万円に急接近。3か月弱で13.5%という急騰を見せたんです」(兜町関係者)

これは約15年ぶりとなる高値水準で、今後は2万円を超えるとの憶測も飛んでいるという。
「日経平均株価は、日本の景気を判断する指標とされ、一般的に、高いほど好景気とされます。安倍晋三首相が就任以来掲げてきたアベノミクスの効果が、円安に加えて現れてきたということですよ」(同関係者)

大手経済シンクタンク・ニッセイ基礎研究所の主任研究員・井出真吾氏も、「アベノミクスは、今のところ成功していると見ています」と言い、こう続ける。
「企業の"稼ぐ力"は、2000年4月にITバブルが弾けて株価急落した当時と比べれば、約3.5倍になっています。さらに今後、日経平均株価は2万2000円から2万3000円まで伸びるのでは、と分析しています」

米国の利上げ問題やギリシャの債務問題、さらには、政情不安な中東地域のリスクなどの懸念はあるものの、「日本経済の見通しは明るい」と同氏は言う。
確かに、JR東日本、西武鉄道、清水建設、トヨタ、日産など多くの大企業がベアを実施。昨年を大きく上回る賃金アップのニュースはテレビや新聞を連日賑わせている。
これこそ、「円安で輸出を増やし、企業収益を上げて給与アップにつなげて景気を回復する」というアベノミクスが狙う理想的な構造なのだ。

しかし――。
理想と現実が合致しない例もまた数多い。
「小売りでは、コンビニの売上高が11か月連続でマイナス。また、円安による原材料高で倒産した企業は、昨年1~11月累計で前年同期の2.7倍になっているんです。また、飲食店も惨憺たるもので、ワタミはこの3月までに102店を閉鎖させました」(経済誌記者)

円安の煽りを受ける企業もあり、日経新聞が実施した世論調査で「景気回復を実感していない」と答えた人が81%という実態なのだ。
さらに、内閣府が発表(3月21日)した「社会意識に関する世論調査」でも、「景気が悪い方向に向かっている」と答えた人は前年の19.0%から30.3%へと大きく増加した。

そのうえ、本当は増えていなければならない給料なのだが、
「14年の平均年収414万円という数字は、00年の461万円に比べて47万円も低い数字です」(同記者)

喧伝される"経済好調動向"と庶民生活の間に広がるギャップに、口角泡を飛ばすのは政治学者の五十嵐仁氏(元法政大教授)だ。
「報道に出ているような日本経済の好調さとは裏腹に、庶民生活は地獄道一直線の惨状です。株価2万円に喜んでいるのは、株式投資をしている5%の国民だけ。残り95%は、生活実感とはかけ離れた"見せかけの株価"に顔をしかめるばかりです」

そのうえ、アベノミクスで経済再生に大きく寄与するはずの円安が物価高騰という強烈な副作用で、庶民の生活に襲いかかっているのだ。
「3月だけでも、日清フーズが家庭用の冷凍食品48品目を約6~14%上げたのを手始めに、紀文食品も魚肉練り製品など約350品を約5~15%値上げ。また、外食産業でも、カレーハウスCoCo壱番屋など大手だけでなく、町の定食屋や立ち食いそば屋で相次いで値上げ。多くのお父サンたちが"昼食難民"と化してしまいました」(食品ジャーナリスト)

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