全長248メートル、基準排水量1万9500トン――。
海上自衛隊の歴史の中で最大の威容を誇る新鋭護衛艦「いずも」が、3月25日に就役した。軍事ライターの黒鉦(くろがね)英夫氏は言う。
「帝国海軍が建造した世界最大の戦艦『大和』の全長が263メートルですから、『いずも』は、それに匹敵する大きさです。最大の特徴は空母を思わせる全通甲板。この広い甲板に、最大で14機のヘリを積載することが可能です」

就役式には国内外を問わず、多くのメディアが取材に訪れたが、なかでも目立っていたのが中国系の報道機関。外信部記者は言う。
「中国のネットニュースは即日、"日本が空母を保有した"と報じました。続けて、"日本で軍国主義が復活している。安倍首相は危険な賭けに出た"とお定まりの論調が続きました」

確かに、日本でも「いずも」を"空母"と形容したメディアはあった。だが、「いずも」は中国側が猛反発するように、専守防衛を旨とする自衛には相応しくない"空母"なのだろうか?
前出の黒鉦氏はこう言う。
「あくまでも海自の呼称は護衛艦です。『いずも』に空母疑惑が浮上するのは、航空機を運用する広い甲板があるからでしょう。ただ、戦闘機を離着艦させるための装置は搭載していませんので、いわゆる空母ではありません。強いて言うなら"ヘリ空母"でしょうか」
「いずも」が積載するのは、哨戒ヘリや輸送ヘリといったヘリコプター。したがって、中国が就役させている「遼寧」のような空母ではない。前出の記者は言う。
「中国も、そんなことは百も承知なんですが、日本の軍国化をデッチ上げたいがために"あれは空母"と喧伝しているんです」

ただ、中国軍にとって、「いずも」が厄介な存在であるのは間違いないようだ。黒鉦氏は言う。
「近代化されたとはいえ、中国海軍は、イージス艦などを保有する海自にまだまだ及びません。そこで、潜水艦戦力の増強に活路を見出していました。でも、『いずも』が東シナ海に展開すれば、積載するSH-60K哨戒ヘリによって、中国軍の潜水艦はすぐに捕捉されてしまいますからね」

また「いずも」は、自衛隊が導入を決めた垂直離着陸機「オスプレイ」も運用できる。オスプレイは尖閣などの島嶼防衛の切り札とされる輸送機だ。どうりで、中国が「いずも」に拒否反応を示すわけだ……。

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