人生に役立つ勝負師の作法 武豊
「飛んだ」ディープインパクトの皐月賞


4月――街を歩いていると、ピカピカのスーツに身を包んだ社会人1年生の方をよく見かけるようになりました。
「あぁ、オレにもあんな時代があったなぁ」
つぶやく言葉の回数だけオジサンになっているのだと思いますが(苦笑)、それは正しく道を歩いてきた証しのような気もします。

一つ年を重ねるごとに、経験もまた積み上げられます。若さには抗しようもありませんが、競馬に限らずどんな世界でも、この経験というやつは、大きな武器になります。
今年、JRAにも、競馬学校を卒業した、加藤祥太、鮫島克駿、野中悠太郎、三津谷隼人の4人と、M・デムーロ、C・ルメールという、名前も実績もある2人が新たに加わりました。
あれこれ言う人もいますが、6人ともライバルであり、大切な仲間です。日本の競馬をさらに盛り上げていくために、腕を競い合えるような関係でいたい――競馬学校を卒業した4人は、これから、眠れなくなるようなミスをおかしたり、痛い思いもいっぱいすると思います。しかし、めげることなく、臆することなく、いつも前向きに馬と真剣に向き合えば、いつか必ず結果はついて来る自分を信じることが大事です。

光と影。天国と地獄。僕自身、今週末、中山競馬場を舞台に行われるGⅠ「皐月賞」には、いい思い出と、記憶から消し去りたい思い出の2つがあります。影は初挑戦となったデビュー2年目の1988年です。「ちょっとはいいところを見せたい」と意気込んでいましたが、結果は、最後の直線で他馬の進路を妨害したとして失格・騎乗停止処分。不名誉な記録だけが残ってしまいました。

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