ところが、阪急からオリックスに球団名が変った頃、世代交代が進んで戦力ダウン。往年の「職人」が球団を去ったあたりから西武の時代が到来し、オリックスはかつての輝きを失った。その時、「優勝しようぜ」とチームを鼓舞する選手が出てきていたら、西武の対抗馬として、新しい時代が築けたのですが、それを言う選手はいなかった。

「優勝」の二文字に拘った選手が現れず、チームより自分の成績を優先する状況。そんな調子では西武に勝てるわけがありません。力はあっただけに、もったいなかったですね。

実際、僕が引退した翌年の95年、阪神淡路大震災が起きました。オリックス球団は震災した神戸を元気付けようと「がんばろう神戸」を掲げ、「優勝」を前面に出しました。その年は見事に優勝。また、11年、東日本大震災が起きた時は「東北を元気にする」をスローガンに掲げた東北楽天が優勝した。どちらも「復興」でチームが一つになった典型です。

優勝するチームは「球団」「選手」「ファン」「球団職員」……それこそ、切符売りの女の子までががっちり一体になっています。戦力の大小は二の次、三の次ですね。

昨年、広島は「カープ女子」ブームで沸き、今年は「黒田(博樹)の男気」で日本中の野球ファンに感動を与えた。広島はまさにチームとファンが一体。DeNAも中畑(清)監督が前線に立ち、自ら広報・宣伝部長を買って出ている姿は選手や球団、ファンを惹きつけた。ジャイアンツが楽に勝てなくなっているのはそういった背景からだと思います。

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