「あの子、いなくなっちゃったんですよ。五月に入ってすぐ」

と、あっさり答えられた。こういう世界の子は、辞めるといわずに辞めて、休むと連絡せずに休む子も少なくない。たいていは人気のない子、売れない子だ。そして、店長にいわせれば霊が見えるといいがちな子だ。

「でもうちって、ユルいでしょ。ふらっといなくなったのに、悪びれずにまたふらっと戻ってくる子もけっこういるんですよ」

それこそ、女性編集者も霊感ゼロの何も見えない人だが。なんとなく、サツキはもう店には戻ってこない予感がした。それをいうと、店長もうなずいた。

「僕も霊感ゼロですが。サツキはすでに、この世にもいない気がします」

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