「巨人監督就任は一生の夢」

そう見ていくと、一人の名前が浮かび上がる。
「知名度、実力ともに申し分のない監督候補は、やはり江川だろうね」(ベテラン取材記者)

江川卓――。
怪物の名をほしいままにした大投手で、「空白の一日」という球史に残る事件の主役。引退後も圧倒的な存在感を発揮する彼に、白羽の矢が立ったのだ。

江川氏の名前が「監督」という単語とともに語られたのは、11年11月25日の清武英利・元球団代表兼GMが行った、いわゆる"清武の乱"会見でのこと。
巨人から解任通告を受けた清武氏はそれを不服とし、当時の渡邉恒雄球団会長を非難するために、渡邉会長の以下の発言を暴露したのだ。
「巨人は弱いだけでなく、スターがいない。江川なら集客できる。彼は悪名高いが、悪名は無名に勝る。彼をヘッドコーチにすれば、次は江川が監督だと江川もファンも期待するだろう。しかし、監督にはしないんだ」

この暴露発言を聞いて、多くの球界関係者は意外に思ったという。
「長嶋政権時代に、江川には二度、投手コーチのオファーがありましたが、二度とも江川は断った。これにナベツネさんが激怒し、江川と巨人軍の縁を切るという話になった。その怒りは解けていたのか、という驚きですね」(球団スカウト)

清武氏の暴露で幻に終わった江川氏の巨人復帰だが、3年半の時を経た今、実現しようとしている。
「周辺情報によれば、ナベツネの"続投要請"にもかかわらず、原は今季限りで進退伺を出すようだ。また、ナベツネ発言の江川ヘッドコーチ案が原の提案だったことは周知の事実で、後継が江川なら原も納得するだろう」(前出の球界事情通)

江尻氏は、ある秘められた思いを明かす。
「江川氏にとって、巨人の監督就任は一生の夢ですからね。以前、ロッテから監督のオファーがあったときも、"監督をやるなら巨人。こだわりがありますので"と言って断っています」

だが、江川氏を取り巻く状況も変わった。
「江川は94年から10年まで、自分の名前を冠したテレビ番組『スポーツうるぐす』を持っていました。同番組ではメインMCのほかに企画構成も務め、このほかのテレビ出演で年間数億円の収入があったと思います。投手コーチの年俸は、よくて5000万円。オファーがあっても考えちゃいますよね」(民放関係者)

現在、江川氏は『うるぐす』の後番組『Going! Sports&News』に出演しているものの、立場はコメンテーター。
また、原監督の現在の年俸は推定3億円と、巨人軍の監督は金銭的にも非常に魅力的と言える。

着実に整いつつある"江川巨人軍監督誕生"への道だが、最後に注目すべき証言を紹介しておこう。
先に述べた『燦々会』が散会したあと、記者の囲み取材に応じた渡邉最高顧問は冗談めかして、
「原君の続投に決まっているが……」
と言ったあと、こう続けたのだ。
「そうは言っても、ドラマチックなことが起こることだってありうる」

なぜか、この発言が報じられることはなかったが、
「この"ドラマチック"が何を意味するかは明らか。来季は、江川のユニフォーム姿が見られるだろう」(前出のスポーツ紙デスク)

ジャイアンツの「新成」は、江川新監督就任が仕上げとなりそうだ。

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