常に明るく、思ったことはズバズバと言って、決してあとに引きずらない。人心を引きつける名将の言葉の秘密!

「やってて楽しいね。こんなんでいいのかと思うくらい。日替わりのヒーローが出てくるってことが、メチャいいね。最高です!」
横浜DeNAベイスターズの中畑清監督(61)が、こう満面の笑みを浮かべたのは、5月13日の中日戦後のことだった。

チームは6対3で勝利し、首位をキープ。さらに、監督通算200勝に到達したのだから、その喜びもひとしおだったのだろう。
「……やったー(小声で)小さく喜ぼうね。別に大した……大したことですよ、僕にとっては。200もできるまでやらしてもらって、ありがとうございました! (脱帽して一礼)。はい、おめでとうございました!」

球場を後にする指揮官の足どりは軽やかだった。
熱烈な横浜ファンで、『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役などで知られる女優のひし美ゆり子さんも、
「毎日が楽しくてしょうがない。このまま優勝なんてことになったら、寿命が10年は伸びちゃう」
と相好を崩すほどの快進撃を続けているDeNA。

「指揮官として最も重要な能力のひとつが、選手のやる気をかき立てること。何気なくかける言葉や試合後のコメントに選手は鋭敏に反応する。中畑さんは、それが抜群にうまいんです」(専門誌記者)
スポーツ紙を彩ってきた「キヨシ語録」と、チームの躍進には密接な関連があったのだ。ということで、改めてキヨシ監督の「絶好調!!」語録を詳しく見ていこう。

余談だが、"キヨシ監督"という呼称について、ご本人が『夕刊フジ』のインタビューで、「うれしいね。プロ野球80年の歴史の中で、(下の)名前で呼ばれる監督が他にいたか? 本名で呼ばれるのはオレしかいないと思う」
と語っているので、本誌も折に触れて"キヨシ監督"と呼ばせていただく。

さて、今季のDeNAは、1番石川雄洋、3番梶谷隆幸、4番筒香嘉智、5番ロペス、6番バルディリスら打撃陣が絶好調。そこに、リリーフ山口俊の先発転向、ドラフト1位ルーキー・山﨑康晃の抑えでの起用が大成功し、チーム力が飛躍的に上がった。

3月23日、ファンミーティングの席上で、山﨑は抑えに任命されている。
中畑「ショートイニングでいい球を投げる。抑えをやりたいか?」
山﨑「やりたいです」
中畑「OK、やってみろ。どうせやるなら厳しいところでな」
山﨑「開幕からストッパーで活躍します」
中畑「おまえ、責任取れよ」
というやり取りに会場は爆笑に包まれたが、山﨑は5月14日現在で16セーブと大活躍。

「本人がツーシームと言う落ちる球は、見ていて打てる気がしない。与田剛の新人最多セーブ記録31を塗り替える可能性は高いですね」(前出の専門誌記者)

投のニューヒーローが山﨑なら、打で開花の時期を迎えたのが筒香だ。
かつて、日本代表の小久保裕紀監督に対し、「一番推薦したい。筒香、どう?」と報道陣の前で"公開売り込み"をかけたこともある中畑監督だが、今季はさらにエスカレート。
「今シーズン、もう筒香と心中するつもり。そのくらい期待しています」と宣言したのだ。

その期待に、筒香は5月14日現在、打率2位、本塁打2位、打点1位と"準三冠王"の働きで応えている。3月28日に巨人の西村健太朗から放った第2号は、東京ドーム右翼の『へーベルハウス』看板を直撃。賞金100万円、と聞いたキヨシ監督は、
「絵に描いたようなホームランだった。子供たちに見せてあげたい。カッコイイよ。思わずサインしてほしいくらい。100万円の領収書にサインしようか?」
と、勢いと謎にあふれたコメントを残している。

「以前、横浜スタジアムで試合を観ていたら、筒香が打ったのよ! 私、ものすごく興奮して、過呼吸になっちゃって。タクシー呼んでもらって途中で帰った。それぐらい興奮するの、筒香が打つと!」
と、前出のひし美さんが語るように、見る者を魅了する筒香の打撃。今季から23歳の若さで主将を務めるが、そこには指揮官の深謀遠慮があった。

取材歴40年のベテラン野球記者の江尻良文氏が言う。
「昨季までの石川から筒香への主将の交代は、上り調子の筒香に自覚を持たせて、中心打者に育てようという意図があります。それと同時に、石川を主将の重圧から外し、打撃に専念させるという"一石二鳥"を狙ったものでした」
当初は辞退したが、「ゴウ、やってみろ」との中畑監督の言葉に、重責を承諾。その結果、両者の好成績となっている。

強いチームにはベテランも欠かせない。
「開幕投手は34歳の久保康友が務め、41歳の三浦大輔も5月5日に初登板初勝利を記録しました」(前出のスポーツ紙デスク)

試合後、中畑監督は
「大輔にとっても大事な試合だった。なんとか白星をつけたいと、みんなが一つになった」
と、ねぎらっている。

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