岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー
格安風俗店のサツキvol.4 写真の中年女性が雇ってくれと…


その女性編集者は仕事は何でも楽しむが、オカルト的なものだけはいつまでも苦手だった。彼女自身は霊感などないというが、たまにこれは危険と感じるときもあるそうだ。

ある格安風俗店で店長に聞かされたサツキという女の話も、そこに含まれた。要約すれば、ちょっと心の状態がアレな子が不意にいなくなった、そんな話だ。サツキが普通の女子大生やOLや主婦なら、行方不明なんて一大事だが。

風俗業界では、ありふれた話となってしまう。そこのところも、怖いといえば怖い。

サツキがいなくなってから1カ月ほど過ぎた、五月の終わり。女性編集者は店長に電話をもらった。そこで聞いた話は、彼女を凍えさせた。夏も近いというのに。

「昨日、五十くらいの女が雇ってくれと来たんです。ごく普通のオバサンだけど、どこかで見たことあると考えて、あっと思い出しました。サツキの写真に写ってたオパサンです。うちの履歴書の、霊が見えるか見えないかの項目は、“見える”に○してました」

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