世界で広がる寿司ネタ争奪戦

だが、たとえ仕入れ価格が上がっても、回転寿司の場合、"一皿100円"を売りにしている店舗も多く、簡単に小売り価格に転嫁するわけにはいかない。

さらに深刻なのは、乱獲による水産資源の枯渇、漁獲量の減少だ。これはサーモンに限った話ではない。
「高級なトロが取れるクロマグロのほか、日本では刺し身用のマグロとして最も消費量の多いメバチマグロも、乱獲が原因で個体数が激減していることが明らかになっています。水産総合研究センターの報告によれば、日本漁船の主要な漁場である中部太平洋におけるメバチマグロの資源レベルは"低位"で、今後も減少が続くと警鐘を鳴らしています」(全国紙社会部記者)

メバチマグロに関してはすでに96年、国際自然保護連合(IUCN)が「絶滅の恐れがある種」に指定している。
「成魚だけでなく、幼魚も根こそぎ捕ってしまう巻き網漁の普及も資源レベル低下の一因」(同記者)
とされるが、今後、漁獲量の削減が世界規模で検討されることは必至の情勢だ。

ニホンウナギが絶滅危惧種に指定され、価格が高騰。庶民の口に入りづらくなったのと同じことが、回転寿司でも起きかねないのだ。

そして、魚の乱獲の背後にあるのが世界的な寿司ブーム。すでに欧米では寿司と日本食が定着しているが、近年はアジアでも寿司の人気が高まっている。
「今、アジアはちょっとした回転寿司ブーム。台湾の『争鮮すしエクスプレス』は台湾に200店舗。マレーシアの『すしキング』も国内に100店舗を展開しています。一方、以前は刺し身を食べる習慣のなかった中国人も富裕層を中心に高級マグロを爆買い。世界を舞台にした寿司ネタの争奪戦が始まっています」(前出の食品業界紙記者)

日本の回転寿司チェーンが苦戦を強いられるのも無理はないのだ。
「このまま魚の価格が高騰し続けるようなら、"一皿100円"を維持するのは難しいかもしれません」と前置きしたうえで、回転寿司評論家の米川伸生氏が言う。
「ただ、日本の回転寿司各社もネタの仕入れに独自のルートを開発するなど、企業努力を続けています。くら寿司の新メニュー"みかんサーモン"は伊予柑の皮から抽出した餌を与えることで、みかん風味のサーモンを作り出すことに成功した意欲作。スシローも"国産生本マグロ6貫盛り980円"という、お得なメニューを目玉にしています」

カフェや居酒屋の要素を取り入れた店舗など、新機軸を打ち出す回転寿司チェーンも珍しくない。
「メニューの多極化や高級化など、生き残りを賭けた各社の経営戦略に注目したいですね」(米川氏)

ピンチのあとにチャンスあり!?

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