2011年の東日本大震災以降、日本人の地震に対する関心は高まるばかりだ。最近では箱根の大湧谷周辺で地震が頻発するなど、予断を許さない状況が今なお続いている

昨年末に公表された全国地震動予測地図によると、首都圏や東海地方、四国地方で震度6以上の地震が起きる確率は、今後30年間で26%以上。関東地方は2013年より引き上げになったエリアが目立ち、東京都新宿区だと2013年末の26%から46%に、さいたま市は同30%が51%になっている。

仮に南海トラフ巨大地震が起きると、東海地方を中心とした関東~近畿地方、四国地方、九州地方の太平洋側地域が被害に遭うとされ、死者数は最悪で約32万人超。

首都圏直下地震だと被害エリアは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県に及び、最悪の場合で死者数は約2万人超、経済損失は95兆3000億円にのぼると想定されている。

そこで注目されているのが、地震による火災・損壊・埋没・流出を補償してくれる「地震保険」。被災後の生活を守るため、有効な備えといえるだろう。

地震保険とは、法律に基づき国と損害保険会社が共同で運営している公共性の高い保険のこと。建物とそれに収容されている家財が保険対象で、それぞれに契約ができる。火災保険とセットで加入するのが条件で、契約金額は火災保険の契約金額の30~50%以内、保険料は居住地や建物の構造によって異なる。ただし、公共性が重視され保険料に保険会社の利潤が含まれていないことから、どの保険会社で加入しても保険料は一律だ。

ところが、この地震保険。保険料を決める「損害保険料率算出機構」は、首都圏直下型地震の発生確率予測が大幅に上昇したことに伴い、全国平均で約30%引き上げる必要があると試算。都内マンションの地震保険は現行で約2万円(契約期間1年/補償上限1000万円)だが、30%アップだと値上げ幅は約6000円になる計算だ。ただし契約者負担が重いということで、損保業界と保険料を認可する金融庁は数年かけて段階的に保険料を上げ、最終的に30%を目指すという。

保険料引き上げは、地震発生時の保険金支払額の高騰を懸念してのこと。損害状況によって異なるが、各家を調査して、全損なら契約金額の100%、半損で50%、一部損壊で5%が支払われる仕組み。

東日本大震災では約13万棟が全壊として認められ、保険金支払額は約1.2兆円(2012年4月時点)になった。ところが、首都圏直下型地震では建物全壊・焼失棟数は約60万棟といわれ、最大3.1兆円になる見込み。これでは損保各社の財政はパンクしてしまう。

国から支援金だけで生活を支えられるとは限らない。金銭面をサポートする地震保険は安心につながるので加入を検討しておきたいところだが、ポイントは、建物と家財の両方の地震保険に入っておくこと。保険金の使い道は定められていないので、建物の保険金を家財、その逆に充てることも可能だからだ。

マンションなど集合住宅だと、専有部分と共用部分の地震保険はわかれていて、前者は所有者、後者はマンション管理組合が契約していることがほとんど。

ところが、共用部分と専有部分の境界が曖昧だったり、共用部分の地震保険に加入していないと、損壊に対する修理費負担について、住民で意見の食い違いが出てくることもありえる。こういった点は、いまからでもチェックしておきたい。

日本に住む限り、地震を「まさか?」で片づけてはいけない。普段からハザードマップで避難場所を確認、自宅に備蓄用の食糧やミネラルウォーター、簡易トイレといった災害対策用具を揃えておくなど事前の準備、あるいは家屋が倒壊した場合のために経済的な備えも求められるだろう。

その一助として、地震保険についても、しっかりと考えていく必要がありそうだ。

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