橋下徹大阪市長が「政界引退」を表明したとき、大仁田厚の名前を出して語る人も多かった。大仁田と言えば何度も引退しながらカムバックし、派手な話題を振りまいてきたからだ。

プロレスファンじゃない人からすれば「なんといい加減でデタラメなジャンルなんだ」と一笑に付して終わりだろう。

しかし、私がプロレスを見ておいてよかったと思うのは「あの時そう言ったじゃないか、ウソをつくな」という正論にも頷きつつ、「じゃあ、これから何ができるのか。明日から見せてくれ」という態度を学べたことだ。

正しい正しくない、白か黒かの二元論よりも、「人間なんてそんなもの」という前提に立ちながら、それでいて決してネガティブな気持ちではなく明日以降を見守る。なんならちょっとした期待を込めて。そんな向き合い方をプロレス、もしくはプロレスファンに教えてもらった。受け身の取り方が広がったように思う。

そして、あらためて最近思うのだ。大仁田は「何度も」復帰してよかったと。世間で何回も引退をしたことを引き合いに出されているのを見るたびにそう思う。

だって、今でも多くの観客を一瞬でひきつけるあの技量、引退してたらもったいない。
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