チャーハンや野菜炒めなど、中華料理はいまや家庭の定番。そこで、赤い缶におじさんの顔が描かれた「味覇(ウェイパァー)」がお馴染の中華調味料として、その人気と地位を確立しているのをご存じだろうか。
これがスゴイのは、ペースト状の調味料をひとさじ入れるだけで、あらフシギ、まるで専門店で出されるようなクオリティに仕立ててしまうこと。家庭における中華料理に欠かせない存在として、多くのファンに愛されてきた存在なのだ。

ところが、この春。この味覇に不穏な動きが起きたという。なんと4月以降、肝心の“中身”がガラッと変わってしまったのだ。つまり以前の味とは違うモノになってしまったということである。

ことの発端は、味覇の販売元である廣記商行と、中身の製造元である創味食品との間に起きたトラブル。結論から言うと、廣記商行の“ある行為”に創味食品が憤慨し、両社の契約は3月末で終了。廣記商行は味覇の中身を変えざるを得なくなったのだ。

そもそも、味覇の中身は創味食品が1961年から業務用に製造・販売していた「創味シャンタンDX」が正体。廣記商行が1981年から一般向けにパッケージして販売していたのが味覇であり、これまでは35年にわたり、「業務用は創味食品」「一般向けは廣記商行」というように市場をすみわけてきた。
このように、良好な婚姻関係を築いてきた両社だが、破談のきっかけを生んだのは、廣記商行の側のよう。昨年にチューブタイプの味覇を発売したのだが、その中身は創味食品とは別の会社に依頼して独自開発したもので、従来の創味シャンタンDXとは別物。それにも関わらず味覇として売り出したことに、創味食品が「ノー」を突きつけたのだ。

ただし、ことの経緯に対して両社で意見の相違も見られる。
廣記商行によると、チューブタイプの共同開発を創味食品に持ち掛けたが、原材料や添加物の情報を開示してもらえず、双方合意で開発は打ち切り。その後、他社に依頼して現行のチューブタイプの味覇を販売したという。

対して創味食品の言い分は、チューブタイプの味覇は創味食品が開発して廣記商行に提案したが、興味を持たれなかった。ところがその後、廣記商行は他社とタッグを組んでチューブタイプをリリースしたものだから、寝耳に水。発売中止の要請にも応じなかったとか。
その後、両社は改めて製造委託の契約を結ぼうとするものの、ここでも「最終的に相手から断られた」という、またしても意見に食い違いが……。結局のところ、冒頭の通り廣記商行は中身を変えて味覇ブランドの販売を継続。

創味食品は、これまでの味覇の中身と同じ「創味シャンタンDX」の一般向け製品を販売。「真実は白い缶の中にある」という意味深なテレビCMには、こういったワケがあったのだ。

ファンからすると、何とも複雑な心境だ。今後、スーパーの棚には新・味覇と旧・味覇(創味シャンタンDX)が並ぶことになり、混乱している消費者も多いことだろう。さて、どっちを選んでいいものやら……。

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