"大きなモノ"を背負った撮影

――背負っていた大きなモノ……に関して、ここで話していただくことはできますか?

釈 はい、大丈夫ですよ。ちょうどその頃に、父が末期がんに冒されていたんですね。私も舞台をやっていて、地方に行くことが多く、夜、東京に戻ったらすぐにその足で父が住んでいた箱根に行って、そこから沼津のがんセンターに連れて行って、という生活を3か月ぐらい送っていたんですね。で、いよいよ、というときに、私も箱根に通うのは大変だからということで、都内の私の家で同居することになったんです。

――そうだったんですね。

釈 そういう状況だったので、最初は『KIRI』の出演をお断りしようと考えたんです。でも、父が闘っているんだから私も闘わなきゃって気持ちになって。

――なるほど。

釈 撮影が開始されたその日に症状が悪化して入院になったんですけど、家族がサポートしてくれて。私も撮影が終わったら、父の元に行って面会時間が許される限りは、その日の出来事を話したり。私のこれまでの人生の中で一番大きなモノを背負っていて、その緊迫感のようなものがキリに乗り移っていたというか……。

――確かに、殺陣のシーンには並々ならぬ気迫が感じられました。

釈 ありがとうございます。

――そんなキリを慕う妹的な存在のルイ役を務めたのは文音(あやね)さん。文音さんといえば、お父様が歌手の長渕剛さんで、お母様が元アクション女優の志穂美悦子さんですね。

釈 そうなんですよ。お母様のDNAを引き継いで、お父様の男気みたいなのをお持ちで。やっぱり、遺伝子ってすごいなって(笑)。

――釈さんと文音さんとの殺陣は、すごい迫力がありましたよ。

釈 文音さんもお母様とアクション・トレーニングを撮影前からされていたらしくて、助けられる部分がありましたね。女性対女性だと、すごく力が強くなり過ぎちゃったり、逆にヘナチョコに見えてリアルさが出なくなってしまいがちなんですけど、文音さんの集中力もすごくて一発OKが多かったですね。

  1. 1
  2. 2
  3. 3