プロ野球「奇跡の大逆転」感動エピソード

球球史をひも解くと、大差を引っくり返した試合が、いくつか目につく。勝利を決して諦めないアスリート魂が生んだ"奇跡の大逆転劇"を、感動エピソードとともに紹介!

97年8月24日大阪ドーム
記録的大逆転劇のきっかけは応援団の鳴りもの応援放棄!


ロッテVS近鉄


プロ野球における大逆転の日本記録は10点差である。過去に三度記録され、そのうち0-10からの逆転が二度ある。

最初が1949年の大陽-大映戦、次が97年8月24日に大阪ドームで行われたロッテ-近鉄戦である。
この試合、ロッテは初回と2回に5点ずつを挙げ、悠々の楽勝ムード。一方の近鉄は、このまま負ければ最下位に転落するという崖っぷち。それなのに、あまりにふがいないナインに、右翼スタンドに陣取った私設応援団は怒り心頭。ついに応援を放棄するという前代未聞の行動に出た。

それまで鳴り響いていた笛や太鼓、トランペットの応援はピタリと止まり、球場を静寂が支配する。広い大阪ドームに響くのは、ボールがミットやグラブに収まるズバンという音、そしてバットがボールを弾く乾いた音のみだ。もちろん、応援団の怒りは選手に伝わった。

3回表、3番手の柴田佳主也投手がロッテ打線を三者凡退に抑え、試合を落ち着かせると、球場の雰囲気が変化し始める。
その裏、1番打者・村上嵩幸がロッテ先発・園川一美投手から本塁打を放って反撃開始。4回には指名打者のフィル・クラークが左中間へ17号ソロを放つ。これで2点。ジリジリ火がつき出すと、5回には4安打で4点を奪い、園川をKO。
4点差まで追い上げる。

しかし、近鉄応援団の沈黙はまだ続く。
それならばと、近鉄は7回に3連打などで3点を追加。ついに1点差に追い上げた。
「これはイケる」と見た近鉄応援団は、8回から応援を再開する。

9回裏、一死二塁の場面、ここが勝負と考えた佐々木恭介監督は、二塁走者だった俊足の武藤孝司に三盗を命じる。これが相手捕手の悪送球を生んで、武藤は一気に生還。土壇場で勝負は振り出しに戻ってしまう。

ついに延長戦に突入。
12回、二死満塁の場面で、打順が回ってきたのは、4回にホームランを放ったクラーク。この試合のキーマンであるクラークは、なんと、ここで値千金のサヨナラヒットを放ち、48年ぶりに0-10からの10点差を逆転するドラマを演じたのである。

試合後、近鉄の佐々木監督は49年以来という話を聞いて、「え、オレが生まれた年やないか! 運命感じるわ」と興奮を隠さず、感想を述べたという。

最下位転落の危機を奇跡の逆転劇で脱した近鉄は、この後、奮起し、3位でシーズンを終えた。

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