プロ野球「奇跡の大逆転」感動エピソード

球球史をひも解くと、大差を引っくり返した試合が、いくつか目につく。勝利を決して諦めないアスリート魂が生んだ"奇跡の大逆転劇"を、感動エピソードとともに紹介!

07年6月16日千葉マリン
二度の屈辱を許すわけがない! 満塁男・金本の一打で逆転成功


ロッテVS阪神


2-7。絶望的とも言える点差のまま、交流戦の阪神-ロッテ戦は最終回に突入した。
このとき、阪神は攻撃陣が絶不調。貧打の阪神打線が、この差を引っくり返せるはずはない。誰もが、そう考えていた。

9回表、反撃の口火を切ったのは、この回の先頭打者である主砲の金本知憲。金本は、マウンドに立つ左腕・藤田宗一との間に"遺恨"があった。

5月27日に、甲子園で開催された同カードで、金本は理不尽な仕打ちを受けていた。ロッテ勝利の大勢が決したあとに回ってきた9回裏の打席で、3球も内角高めを攻められたあげく、死球を食らっていたのだ。
「その日、阪神は、ロッテの福浦和也一塁手に2つの死球を与えており、金本への内角攻めと死球は、それに対する報復行為と取れました。この露骨なやり方に阪神ベンチは激昂、ロッテ側に詰め寄り、試合が10分間ほど中断され、球場は大変な騒ぎになりました」(阪神担当記者)

藤田との対戦は、その日以来だった。すると、金本は前回のお返しとばかりに、センター前にクリーンヒットを放つ。
このアニキの気迫の一打に、眠っていた阪神打線が目を覚ます。連打を浴びせて"遺恨の相手"藤田を打ち崩し、ロッテの守護神・小林雅英投手をマウンドに引っ張り出した。

しかし、阪神の勢いは小林をもってしても止めることはできなかった。ついに7-7の同点となり、一死二、三塁となる。
ここで打順が回ってきたのは、この日、3安打と好調の林威助一塁手。ロッテのバッテリーは林との勝負を避けて敬遠を選択し、金本と勝負する道を選んだ。

この打席まで満塁の場面での打率が「6割6分7厘、12打点」という、満塁にめっぽう強い金本が、この屈辱に燃えないはずはない。
小林から代わった薮田安彦投手の3球目をライトに打ち返し、見事2点タイムリーを放ち、9-7と阪神は逆転に成功した。

このあとも阪神の勢いは止まらず、さらに2点追加。
結局、阪神は、この回だけで14人の打者を送り込み、9点も叩き出して、11―7と逆に4点差をつけて突き放した。
「遺恨? もう終わったことや」

前回の死球と今回の"前の打者が敬遠される"という二重の屈辱を晴らした金本は、涼しげなコメントを残した。だが、指揮官の岡田彰布監督は満面の笑みを浮かべて、
「年に1、2回あるかないかの試合。金本がすべて」
と感想を述べた。

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