コンペにはさらなる疑惑が!

これでは、最初から結論ありきといわれても仕方がない。そのコンペで最終案に選ばれたのは、イラク系英国人の女性建築家、ザハ・ハディド氏のデザインだった。
「ザハ氏は、良く言うと前衛的、悪く言えば荒唐無稽で知られる建築家。その分、実現率は"3割打者"というところでしょうか。野球選手なら優秀ですが、普通の設計家なら、8~9割が当たり前」(森山氏)

ザハ案の一番の特徴は、天井に設置された2本の"キールアーチ"と呼ばれる骨組みだが、
「これは隅田川にかかる永代橋の2倍の長さがあるのに、支えがまったくない構造になっています。実現するにはガッチリした基礎工事が必要なんですが、建設予定地の地盤は柔らかく、しかも、地下には都営大江戸線が走っています。巨大なパーツを運び込むのにも手間がかかり、費用が膨れ上がるのも無理はありません。しかも、このアーチは競技にはなんの役にもたたない、ただの飾りなんです」(森山氏)

国立競技場を管理運営するJSC(日本スポーツ振興センター)も批判がこたえたのか、昨年5月には規模を縮小して総工費を3000億円から1625億円まで圧縮すると発表したが、
「批判を避けるために出した数字にすぎません。一説によると、消費税を5%で計算しているとか、資材費や人件費の高騰分を含めていないといわれています。ゼネコン側も当然、そんな費用で建設できないから、官邸に泣きついたわけです。このままでは、どんなに見直ししても、実際の総工費は2500億円程度に膨れ上がるでしょう」(前出の永田町関係者)

こうなると、やはり国としても東京都の負担を求めざるをえない。舛添知事は正確な総工費の金額を文科省に求めているが、本誌が文科省に問い合わせると、
「できるだけ早くお伝えするため、調整中です」(スポーツ・青少年局スポーツ・青少年企画課施設係)
と、いまだに、そのメドすら立っていない状況だ。
これだけでも驚きだが、コンペを実施したJSCとザハ氏との契約内容は、デザインの"監修"。つまり、彼女は13億円のギャラを得るものの、そのデザインを具体化するための設計は、別な誰かがやらねばならないのだ。

さらに本誌は、そのコンペがあぶりだした、ある疑惑を突き止めた。
「新競技場の建設予定地である神宮外苑周辺は、風致地区(自然美を維持・保存すべき地区)に指定され、建物の高さが15メートルと規制されていました。ところがコンペの募集要項は、なぜか"70メートル超の建築物"となっていたんです。
結果、ザハ案が採用され、"こんなに素晴らしい作品をコンペで選んだんだから、規制のほうを変えるしかない"と言わんばかりに、高さ制限は解除されてしまいました」(前出の森山氏)

  1. 1
  2. 2
  3. 3