プロ野球「奇跡の大逆転」感動エピソード

球球史をひも解くと、大差を引っくり返した試合が、いくつか目につく。勝利を決して諦めないアスリート魂が生んだ"奇跡の大逆転劇"を、感動エピソードとともに紹介!

13年5月10日横浜スタジアム
二軍落ちしていた多村の復帰戦 待ちに待った一軍で劇的3ラン


巨人VSDeNA


長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督の存在は"ミラクル"を起こすのかもしれない。
中畑清のDeNA監督就任2年目となる13年シーズン。本拠地・横浜スタジアムに、長嶋氏が激励に駆けつけた。試合前、VIPルームを訪れた中畑監督が「おめでとうございます」と国民栄誉賞受賞を祝福すると、ミスターは「今日、ひとつやってみろ」とハッパをかけたという。

試合は壮絶な展開となった。巨人が初回に5点を入れると、その裏、DeNAは3点を返す。2点差なら射程距離だが、6回、7回と加点した巨人は10ー3とDeNAを突き放しにかかる。しかし、DeNAの奇跡の巻き返しは、ここから始まった。

7回裏に6点を返したDeNAは9-10と、1点差に詰め寄ったのだ。
9回の攻撃で、先頭の金城龍彦のゴロはファウルかフェアか微妙な判定に。球審はフェアと判定し、アウトを宣告すると、中畑監督はベンチを飛び出して抗議するが、判定は覆らない。

しかし、このあと高城俊人、後藤武敏が必死で繋ぐ。
9回一死一、二塁の場面で、打順が回ってきたのが多村仁志外野手。この試合、途中出場ながら1安打1本塁打と当たっていた。
実は、多村は4月22日に二軍落ちし、この日に一軍復帰を果たしたばかり。

二軍落ちしたのは左太腿の張りが原因だったが、実は、それほどの重症ではなかった。トレーナーから首脳陣に症状が報告される際、いつの間にやら重症と誤解されてしまったのだ。
しかも、二軍落ちしている間に、松本啓二朗や井手正太郎が活躍したこともあって、復帰が遅れてしまう不運に見舞われていた。

待ちに待った復帰戦。多村はノッていた。最終回の打席でも、その気持ちは変わらなかった。「ぶち込め!」ベンチから中畑監督の檄が飛ぶ。その声に応えるように、多村がひと振りしたバットは、ボールを右翼席に運ぶ。劇的なサヨナラ3ラン。

結局、多村はこの日、3安打5打点の活躍で、一躍ヒーローとなった。ダイヤモンドを一周し、ホームベースを踏んだ多村を、中畑監督は両腕でしっかりと抱きしめた。
VIPルームのミスターも大満足する、素晴らしい逆転劇だった。

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