―当時の〝新・闘魂三銃士〟(柴田勝頼、中邑真輔、棚橋弘至)ともシングルで対戦してます。

天龍 柴田とはよくシングルでやって。やんちゃで生意気な奴だったけど、俺との殴り合いがお客の共感を呼んでいた実感はあったね。中邑は器用だったけれど、線が細かったね。その当時の彼は、自分を上手に見せようという気持ちが先走ってたかな。今のキャラクターのようなものが出たのは、やっぱり彼自身がふてぶてしくなってからですよ。棚橋は、「体力のない選手だなあ」が第一印象。俺、戦う前、彼を「器用な選手」って聞いてたんですよ。ただ、俺の中での器用イコール、三沢レベルの選手ってなっちゃうんですよね。そういう意味で言えば、「あ、下手だな」っていうのが正直な気持ちでしたね。中邑は、まあ、「中くらい」という感じだった。まあ、あくまで04年当時の話ではあるけれど。

―逆に言えば、天龍さんにとって、三沢さんはそれほど上手かった?

天龍 うん。はじめてやる相手を、どうしても、「三沢と比べてどうか?」って見ちゃう俺がいるんだよね。もう、基準が三沢なの。彼は若手時代から驚くほど器用だったのよ。あきらかに新人離れしてたよ。俺個人で断言させてもらえば、器用さで三沢を越えた奴はいないね。

―現在の新日本プロレスでは、天龍さんと肌を交えてないオカダ・カズチカ選手がトップの一角をなしていますが。

天龍 辛辣な意見になるかもだけど、彼に関して言えば、トップの気持ちになりきれてないね。それは、彼が真の意味でのトップになったことがないから。本当の部分で天下を取ってないから、天下を取った人の気持ちがわからない。

―具体的には?

天龍 俺たちは、トップと言われる選手たちを、最初は遠くから見てる。で、徐々に近づいて行くことで、「こんな自負があるんだ」「こんな苦労があるんだ」とわかっていく。オカダはその過程がなく、いきなりトップに上がってしまった感じがするね。今の彼の言葉は、ただのファンが感想を喋ってるのと同じ言葉に感じますね。今後、プロレスというビジネスが身に染みてわかってきた時、彼の言葉は全然違うものになって行くはずですよ。

―改めて、新日本のプロレスを振り返ると?

天龍 全日本だと、例えば鶴田とかが余裕を持って戦うスタイルだったけれど、新日本は、そういうのを許さないプロレスだったね。もし余裕を持ってやってたら、帰った控え室で山本小鉄や星野勘太郎にどやされるような。「それはお客に対して失礼だろう」という意味の真剣さですよね。

―その新日本は、ここ数年、盛り返してきた印象があります。

天龍 変わったね。見ててわかりやすいプロレスになった。昭和や90年代との違いを感じる人もいるかもだけど、でも、それでお客が入るから今のスタイルになっているわけで。昔のスタイルをやってお客が入らなければ、困るのは選手だよ。今のお客が求めるスタイルを新日本がやっているからこそ、ひいてはプロレス界全体を盛り返すことができているんだということは、忘れずにいたいね。

(15年3月、品川・ホテル東京インターコンチネンタルにて)

※取材全文から一部分のみ抜粋、全編は「逆説のプロレス」本誌でお楽しみください。

取材◎瑞佐富郎

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「新シリーズ 逆説のプロレス」(双葉社スーパームック)より引用

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