映画監督 M・ナイト・シャマラン「黒澤明、宮崎駿は神様のような存在です」~本物の映画を求める人間力の画像
映画監督 M・ナイト・シャマラン「黒澤明、宮崎駿は神様のような存在です」~本物の映画を求める人間力の画像

「僕は作品のなかで、娯楽性と芸術性を両立させたいんです」

日本には、もう何度も来ていますよ。何度、来たかわからなくなるくらいにね。人は親切で優しいし、日本食もとてもおいしい。それに、黒澤明、宮崎駿は僕にとって神様のような存在なので、日本はラブ、大好きです。
だから、1999年に公開された映画『シックス・センス』は、日本でもたくさんの方が観てくれたと聞いて、とてもうれしかったです。

僕は、生まれたのがインドなんですが、今、生活しているのは、アメリカ。アメリカでも外食するときは、だいたい日本食か、インド料理のどちらかを選びますよ。
今回、日本に来てからは炉端焼きの店にいきました。注文した料理が出来上がってくるときに、"お待たせしましたー!"って大声で持ってくるんですよ。日本語は聞きとれないから、"怒られているのかな?"ってびっくりしました(笑)。

料理はとてもおいしかったんですが、周りを見渡すと、お客さんがみんな外国人なんですよね。ちょっと、不思議な気分でした(笑)。

その後に、飲みにいったのが、いわゆる大衆的な居酒屋で、荷物を置くスペースもないような店だったんですが、そっちの店の方がしっくりきましたね。そこは、日本人じゃないのは、僕たちだけだったので、ちょっと安心しました(笑)。

日本に来たのは、僕が初めて撮ったテレビドラマを日本の方にも知ってもらうため。今までは、ずっと映画を撮ってきたんですが、今回初めてテレビドラマを撮ったんです。以前から、テレビの仕事の話は、きていたんですが、興味をひかれなかったんですよ。

僕のなかで、テレビドラマってファストフードのようなものだと思っていて、その時、おいしく食べられればいいという認識だった。映画を見終わったあとに、もう一度、頭の中で噛み砕いて……みたいな作業はなかったと思うんです。

ただ、最近はオンデマンドで配信もできるようになって、DVDとして形として残るようになった。まぁDVDは、けっこう前からあったんですが、ドラマ自体に何度も見返したいというほどのクオリティのものが少なかった。

それが、ここ6、7年の間で、テレビドラマの質がどんどん高まってきたと感じていて、名優と呼ばれる俳優だったり、最上級のストリーテラーの人々がどんどんテレビドラマ界に参加していってるんです。僕自身も、視野を広げて新しいことに挑戦したいと思っていた時期だったので、"その世界に参加してみたい"と思って、今回の話を受けることにしたんです。

『ウェイワード・パインズ 出口のない街』というタイトルなんですが、アメリカでは公開初日にインターネットなどを通して、380万人が見てくれて、その3日後には、それが720万人になっていた。オンデマンド配信が登場して、作品がおもしろければ、すぐに数字になって返ってくるんです。
それが、ビッグ・マネーに変わるのも大きな魅力ですね(笑)。

僕は作品のなかで、娯楽性と芸術性を両立させたいんです。今回の作品も、前半はミステリーの要素をふんだんに盛り込んだので、楽しんでもらえると思います。ただ、そのお話の裏には、哲学的な壮大なテーマが隠されていて、それが、物語が進むに連れ、明かされていきます。
そして、最後まで見たあとに、もう一度はじめから見返してもらえれば、そのテーマに沿うように、細部が作り込まれていることに気がつくはずです。

ただ、消費されるだけではなく、何度も頭の中で反芻して、時間をかけてゆっくりと消化をしていく、そんな作品をこれからもつくっていきたいですね。

撮影/弦巻 勝


M・ナイト・シャマラン

1970年8月6日、インド生まれ。幼少期より、父親に買ってもらったカメラで、映像作品を制作。17歳までに45本の自主映画を撮影。高校卒業後、渡米し、ニューヨーク大学芸術学部で、映画を学ぶ。99年の『シックス・センス』が大ヒットし、その年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞など6部門にノミネートされ、一躍、脚光を浴びる。その後、『ハプニング』、『エアベンダー』など、日本でもヒットした大作を手掛け、現在もハリウッドを代表する映画監督として活躍中。

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