"蜜月時代"が終焉した理由

永田町関係者が明かす。
「ナベツネさんは、自社の社員を安倍談話の内容を検討する有識者会議である『21世紀構想懇談会』に送り込んでいます。さらに、懇談会の北岡伸一座長代理は、読売主催のシンポジウム常連の"読売文化人"として知られています。その北岡氏は先の大戦について"安倍首相に『日本は侵略した』と言わせたいと思っている"と述べています。意外でしょうが、談話に"侵略"を盛り込むよう働きかけている"黒幕"はナベツネさんなんです」

渡邉氏が"過去の謝罪"にこだわるのは、自らの戦争体験(終戦時、陸軍二等兵)も影響しているという。
「ナベツネさんは、軍隊に入り、上官からいじめられたと言っています。昨年の『文藝春秋』9月号に発表した『我が体験的靖国論』からも戦争アレルギーがよく分かる。彼は安倍首相が謝罪を見送った場合、倒閣運動も辞さないと菅義偉官房長官に伝えていると言いますから、本気も本気なんですよ」(前出の関係者)

実は安倍首相と渡邉会長は、思想信条において相反する面が多々あるという。軋轢が表面化した最初は、第2次安倍政権発足(12年12月)の1年後だった。首相の靖国参拝に「断固反対」を公言する渡邉氏を嘲笑うかのように、13年12月26日、安倍首相は突然、靖国神社を参拝した。
「A級戦犯が合祀されている靖国参拝に代わり、国立戦没者追悼施設を建設すべきというのがナベツネさんの持論。第1次安倍政権の発足時には、安倍さんに"靖国神社に参拝するな"とネジ込んだと言いますからね」(自民党関係者)

この言いつけを守ったのか、実際、第1次安倍内閣では、安倍首相は一度も靖国神社を参拝していない。
「ナベツネさんは、第2次安倍内閣では、その約束を反故にされたとおカンムリなんですよ。安倍首相のお父さん、晋太郎元外相は、政治家になる前は毎日新聞の政治部記者でした。当時、ナベツネさんは読売新聞政治部の辣腕記者として勇名を馳せていた。ナベツネさんは晋太郎さんが将来必ず政治家になるとにらみ、当時から安倍家に出入りしていたんです。そんな関係もあり、晋太郎氏が亡くなった後、ナベツネさんは安倍首相の後見人役を自認していたんです」(古参の政治記者)

安倍首相の靖国参拝以降、その"蜜月関係"に隙間風が吹き始めたわけだ。
「両者の関係がいよいよ抜き差しならなくなったのは、安倍談話の内容が漏れ伝わってきてからです。ただ、海千山千のナベツネさんのこと、安倍談話にここまで影響力を発揮しようとするのは、"隠された思惑"があるためとも言われています」(同記者)

それは、17年4月からの消費税増税(10%)時に、「新聞に軽減税率を適用させる」というものだ。
「新聞は生活必需品、低所得者も読めるようにとの理屈です。インターネット普及で新聞離れが叫ばれる今、それを食い止めたいナベツネさんが談話をめぐりブラフをかけて、政権との交渉材料にするというものです」(前出のデスク)

これは少しうがった見方かもしれないが、
「首相は戦後70年談話をうまく軟着陸させられなければ、死に体になる。安保法案可決、総裁再選、そして来夏の参院選勝利、悲願の憲法改正へのシナリオが危うくなるわけです。無事に夏を乗り切ってほしいというのが、偽らざる願いです」(前出の自民党関係者)

安倍首相の暑くて長い夏は、これからだ――。

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