G1がスタートした90年代初頭は、まさにプロレスブーム。FMWなどのインディー団体が乱立するなか、90年にはメガネスーパーによる大資本をバックに各団体から選手を集めてSWSが旗揚げしている。

蝶野 SWSから話はありましたよ。( 元新日本プロレスで、SWSに移籍した)ドン荒川さんからね。俺や武藤(敬司)さん、橋本選手に控え室で「よう、おまえら、もう少ししたらSWSへの移籍金として、1億円のアタッシェケースを持ってくるからな」って。荒川さんは、俺たちをかわいがってくれてたの。もし1億円を持ってきてたら三銃士みんなSWSに行ってたでしょうね。でも、荒川さんはこなかった。

永島 俺はその動きは、まったく無視してたね。寄せ集めでやったって、うまくいかねえよって。ただ、坂口(征二)さんは「武藤が狙われてる」と聞いてオロオロ。「これは絶対止めなきゃいけない」って。

蝶野  選手サイドの本音を言うと、もう人員が溢れてたから。むしろ離脱者が出れば喜ぶみたいな感じはありましたよ。結局、ジョージ高野さんと佐野(直喜)さんがいなくなりましたけど、いい就職先ができてよかったなって感覚でした。彼らが新日本に残って、上にいけたかはわからないし、SWSは収入もいいわけですから。ただ、繰り返すけど、俺のところに1 億円はこなかった(苦笑)。どうせ荒川さんが懐に入れたんだろうって思ってましたね。

―― 90 年と言えば、蝶野さんもすぐ横で聞いた、橋本真也の迷言「時は来た!」もありましたね。

蝶野  あの時はね、カードが(アントニオ)猪木&坂口vs橋本&蝶野で、まず東京ドームみたいな大舞台で俺らが大先輩とやっていいのかなって疑問があった。当日もそう思ってあたふたしてるとこに、テレビカメラが「試合前のコメントを撮らせてください」と。海外でもやってきた若手の、アメリカナイズされたアピールが見たいという感じで頼まれて。で、当然、猪木さん、坂口さんが後かと思ったら、猪木さんのほうに最初に撮りに行って。モニターで見てたら、猪木さんは「出る前に負けること考えるバカがいるかよ!」ってバーンと張り手を……。

――あの有名なパフォーマンスですね。

蝶野  それ見て俺らは「どっちが締める?」みたいな相談したら、橋本選手が「俺が行く」と。これは引かないと思って任せたら「時は来た! それだけだ」。俺としては「マジかよ、それだけか?」って。しかも、声が高くて抜けたような感じで。映像にも残ってるけど、俺もマジメに作ってた表情が崩れちゃってね。

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