原子爆弾だって問題ではない

では、そうして成立した安倍長期政権が狙う"危なすぎる目的"は何か?
ある政治ジャーナリストは「中国との緊張関係を利用した核武装の可能性」を指摘する。
「安倍首相の祖父である岸信介元首相は、米国に"防衛上、核武装の必要が迫られれば日本は核武装する"と非公式に伝達したこともあるように、核爆弾の開発に執念を燃やしてきた。一方の安倍首相も、02年の官房副長官時代に行った講演の質疑応答において、大陸間弾道弾を作ってもいいのかと問われると、"大陸間弾道弾はですね、憲法上は問題ではない""憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね"と、核武装の可能性を示唆してきた過去がある」

つまり、核兵器を持つ中国との軍拡は、願ってもない口実になるのだ。
「そもそも、今回の安保法案成立自体、憲法改正の布石という捉え方もある。"安保法案は確かに違憲だ。ならば、違憲状態を解消するためには憲法改正しかない"という論法で、改憲を実現するわけです。55年前に安保改定を果たした祖父でも成し得なかった憲法改正が実現すれば、それこそ、核の保有だって可能になります」(前出の全国紙政治部デスク)

とはいえ、実際に戦争の可能性を身近に感じる人はほとんどいないだろう。13年2月の東シナ海における中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦へのレーダー照射事件のような突発的な事態があったとしても、関係者でもなければ、そんな現場に自分がいることも想像できないだろう。
だが、軍拡での経済発展を目指す安倍政権の"目的"のために、すでに着々と"手段"の構築が図られているとしたら――。
有事の際に血を流すのは、実は、"徴兵"で派兵されたあなただとしたら――。

その鍵を握るのが、10月に、国民一人一人に12桁の番号の通知が開始される社会保障・税保障制度、通称「マイナンバー制」と、6月に衆院で可決し、9月1日から施行される「改正労働者派遣法案」だ。
「マイナンバー制は税、年金、雇用保険、健康保険、福祉など、今は担当する役所ごとにそれぞれ管理している個人情報について、一元管理するものです。行政機関にとっては、何番の誰が、いくら税金や保険料を払い、どんな社会保障給付を受けているのか、容易に把握できるようになります」(自民党関係者)

その意味では、国民も利便性が向上するだろうが、現実はキナ臭いようだ。立教大学の郭洋春(カクヤンチュン)教授(経済学)が指摘する。
「これまでの安倍政権下で具現化されてきた政策を見る限り、国民の利便性の向上だけとは考えにくい。たとえば、韓国では朝鮮戦争後、韓国住民であることを証明するために、1962年、住民登録番号制度が施行されましたが、国民の利便性だけでなく、徴兵にも利用されています」

しかし、大々的な徴兵制は、さすがに猛反発が予想される。見えない形で徴兵制が行われるのだ。
「有事に必要な人数を考慮すると、自衛隊には数万人が不足しているとされます。そこで、"経済的徴兵"を行うんです」(防衛産業の関係者)
マイナンバー制の運用次第では、身長、体重、奨学金などの借金の金額、性犯罪歴などがすべて把握できる可能性もある。
「自衛隊は性犯罪歴がなく、借金があり、体力的に望ましい若者を常に把握できて、勧誘ができるようになる。実際、米国では、軍に入隊すれば国防総省が奨学金の返済額を全額肩代わりする制度があります」(労働関係に詳しいジャーナリストの小石川シンイチ氏)

若年貧困層を兵士の道に追い立てる"経済的徴兵"は、決して夢物語ではない。
「14年8月、文部科学省は、大学生らの経済支援に関する報告書をまとめたが、その検討過程で、有識者会議メンバーの一人は、卒業後に就職できず、奨学金の返還に苦しむ人たちについて"防衛省でインターンシップ(就業体験)をさせたらどうか"と発言しているんです」(経済誌記者)

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