東京を代表する繁華街・渋谷は最先端の流行を発信する街として全国的に有名ですが、ここは東京の中でもっとも劇的な変化をした場所としても知られています。
渋谷は、かつて流れていた渋谷川と宇田川の合流地点に作られた谷底の街。江戸時代には、雑木林の中に畑が点在するだけの場末の村でした。現在の駅前あたりは晴れると土埃が舞い、雨が降るとぬかるむ“役立たずの土地”で、住む人もいない状態。渋谷駅ができた明治18年当時でさえ、周りに建物らしい建物はなかったそうです。
さて、渋谷のマスコット的存在になっているハチ公像を背にしてスクランブル交差点を渡ると、目黒方面へと延びる道玄坂があります。この道玄坂という名前は、大和田道玄という男にちなんでつけられたという説があります。
大和田道玄は室町時代後期に、現在の渋谷近辺を根城に活動していた追い剥ぎ。坂の上の松の木を物見に使って通行人を物色して襲い、金品を奪っていたといわれています。道元の出る場所だから、のちに「道玄坂」と呼ばれるようになったわけです。
これはあくまで一説ですが、21世紀のおしゃれスポットが追い剥ぎの名前だったとは、ちょっと意外。しかし、今も周辺のホテルでは多くの男女が身ぐるみ剥いでおり、その意味では伝統は守られているようです。