散らかる部屋は認知症の兆候

時間のみならず、空間の認識も難しくなる。
「アンケートには、友達同士のランチの約束の日時や場所を間違え、集合できないというケースが多く見られました。1度だけならともかく、集合場所に行かれないことが2度あれば要注意です」(前出の大野さん)

空間の認識といえば、タクシーで角を右に曲がらなければならないのに、「左」と指示するのが頻繁に起きるなら気をつけたい。
「この場合、左右失認といいます。なお、失認には、どっちが上かわからなくなる"上下失認"もあります」(前出の土田院長)

試しに「お箸を持つ手は左右どっち?」「お茶碗は?」と質問してみよう。左右反対だと、空間認知力の低下の可能性も。
前述の『家族の会』によるアンケートでは、時間と空間認識以外に、「料理や車の運転などのミスが多くなった」「新しいことが覚えられない」「テレビ番組の内容が理解できなくなった」など、判断、理解力の衰えが多く見られたとの回答が多かったという。
「よかれと思って、操作が簡単な新しいエアコンやテレビを買ってあげたら、混乱してパニックになることがあります」(大野さん)

新しいことが覚えられないので、使い方が分からなくなるのだ。また、
「たとえば『水戸黄門』のように、ワンパターンで起承転結が決まっているテレビ番組ですら、話の進行が分からなくなり、ご当人が"今、何やってんだ"と呟いて、ご家族が異変に気づくケースも」(前同)

また、部屋が散らかるようになった人も、認知症の疑いがある。捨てるべき物と取っておくべき物の判断ができなくなって、いわゆる"ゴミ屋敷状態"になってしまうこともある。
判断力の低下を手っ取り早く見るには、カンタンな計算をさせるのも有効だ。
「1200円のお小遣いを5人の孫で均等に分けると1人分いくらになる?」。
多少の時間をかけても結構。面倒くさがって電卓を使ったりするようなら、計算力の衰えの可能性が。

シャツのボタンを1つずらして、はめたりするのも、認知症患者にはよく見られるという。
「シャツのボタンの掛け違えは"失行"といい、考えている通りの行動ができないということです。認知症が脳の器質的な異常で起こるために出る現象なんです。一時的な記憶プロセスの問題で物忘れしただけの健常者なら、ボタンのかけ違いは起きえませんからね」(土田院長)

さらに、認知症の大きな特徴として、さまざまな脳の機能が低下したせいで、患者本人の性格まで変わることが挙げられる。

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