認知症予防のアドバイスは?

「特に、イライラしたり、怒りっぽくなるというのは、認知症に伴う性格変化としては、よく見られる症状です」(土田院長)

実際に、『家族の会』のアンケート調査結果でも、「周りへの気遣いがなくなり、ガンコになった」「自分の失敗を人のせいにする」などが多かったという。
「たとえば、これまで難なく洗濯物をたためていたのが、認知症による判断の低下などでできなくなる。以前はできていた当たり前のことができなくなったら、イライラもしますよね。そういった心情も関係あるのではないでしょうか」(大野さん)

一方、土田院長は、特に本能を司っている大脳辺縁系で認知症が進行した場合、「食欲、性欲、睡眠欲」の本能が強く出る場合もあると示唆する。
「欲望に忠実に行動するようになった結果、道端に落ちているジュースの缶の残りを飲んだりするケースも。普通は理性が抑えてますが、それができなくなるんです」

その一方、自分の変化を痛切に感じ、「"頭が変になった"と本人が訴える」「一人になると怖がったり寂しがったりする」「外出時、持ち物を何度も確かめる」など強い不安感を示すアンケート回答も多かったという。誰よりも苦しんでいるのは患者本人なのだ。

さらに恐ろしいのは、"抑うつ"と呼ばれる症状。
「活動力の低下とともに精神的な低下が現れ、それが同時に一挙に認知症を進めることもあるから、要注意です」(土田院長)

下着を替えず、身だしなみに構わなくなったり、趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなったり、塞ぎ込んで何をするのも億劫がり、嫌がるようになったら、抑うつ症状の可能性が大きい。

大野さんが具体例を挙げてくれた。
「これまで、会えば"おはよう!"と元気に挨拶してくれていた近所のお爺ちゃんが無表情になり、ろくに挨拶もせず、スッと行ってしまう。また、大の相撲ファンで、場所中は毎日、生中継を見て、贔屓(ひいき)の力士が土俵際に追い詰められたら"頑張れ!"と興奮し、中腰になっていた方が、ただボ~ッと画面を見つめているだけに。認知症による判断力の衰えで勝負の結果もわからなくなり、見ていておもしろくなくなったんでしょう」

そんな認知症を予防するためのアドバイスを、土田院長が授けてくれた。
「ともかく趣味を持つこと。仕事一筋、真面目でキャリアのあった会社員ほど危ない。現役時代に頭を使っていたのが、定年で一挙に使わなくなる。しかも趣味もなく家にいがちで、話し相手は奥さんだけとなると、ついつい不満をぶつけ、熟年離婚。で、唯一の話し相手もいなくなり、加速度的に認知症は進行……。多くの患者さんを診ていると、現役時代、趣味もあり、適度に遊んでいる方が認知症になりにくい傾向にありますね」

心身ともに健康な老後を過ごしましょう!

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3