世の中の動きが「あ、これはあのときのプロレス界の話に似ているな」と思うことがある。プロレスを長いことみているとモノの見方や考えた方にけっこう参考になる。

これに非常に貢献しているのが長州力である。長州のプロレス人生は激烈だからだ。

長州は格上とされた藤波に下剋上を仕掛けて人生を変えたり、自分で団体をつくったかと思えばまた戻ったりして離合集散を繰り返した。長州の生き様はエネルギッシュで、世の中で起きる人間関係をたとえるのにもってこいなのだ。

たとえば私が中学生ぐらいのとき(80年代中盤)、プロレス界は団体分裂とか思想闘争とか常に盛り上がっていた。

当時私はプロレス誌のほかに、父親が買ってくる「文藝春秋」や週刊誌も読んでいた。あの頃の田中角栄だとか竹下派独立だとかの記事を読んでいたら、「まったくプロレスの軍団抗争と同じじゃないか!」とワクワクしたからだ。政治もプロレスも見方や楽しみ方がまったく同じだった。すべては人間のおもしろさやむずかしさにつながってくる。

そんな私ですが、さすがに控えていた「たとえ」がある。それが、長州力が率いた「維新軍団」と政党の「維新の党」についての記述です。名称がそのままだから、さすがにこれを比較して語るのはベタすぎるかなと・・・。

しかし今週のニュースを見ていたら、やはり「維新」についてプロレス界の歴史で復習したくなった。
「橋下徹、松井一郎氏が離党表明 維新分裂の可能性」(日刊スポーツ)という話題である。

《維新は、山形市長選への対応をめぐり柿沢未途幹事長への辞任要求が高まり、橋下氏に近い「大阪系」の国会議員と、松野頼久代表ら非大阪系議員の対立が激化。(略)党分裂の可能性が出てきた。》

これ、かつてプロレス界で起きたことにホント似てるんです。

維新軍団をつくった長州力は「ジャパンプロレス」と名称を変えて、新日本プロレスのライバルである全日本プロレスに登場した。

しかし、わずか数年で長州はジャパンプロを「割って」新日本プロレスにUターンするのだ。あれは驚いた。一世を風靡し、鉄の結束を誇ったあの軍団が分裂するとは、と。1987年のことだ。

最近発売された『真説・長州力』(田崎健太著、集英社)という本を読むと、あの頃の長州はマサ斎藤の影響を非常に大きく受けたことがわかる。日本の団体に所属せず、自分の腕一本でアメリカを渡り歩いたマサ斎藤。そんなマサから、長州は「自分の売り時」「高く売ること」というアメリカナイズされたプロ意識を教えられたのだ。だから、結果的に自分の団体が分裂することになっても長州は新しい道を選択する。

この事例で言うなら、今回の「維新の党」分裂騒動も興味深くみえる。人の野心やエネルギーに注目する物件にもなる。

とくに橋下徹最高顧問と松井一郎顧問というトップのふたりが自ら抜けるのである。この動きは理不尽にみえるし、こういう展開を一笑に付す人も多いだろう。でも人間ウォッチという点で貴重になると思う。

団体のトップである長州が自ら動いたように「今後の展開をどう見据えての行動なのか」という点も想像し甲斐がある。

新聞や週刊誌の下世話な報道も含めて注視したい「長州」物件である。

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