恵美と隆二の2人は2人3脚の売り込みを始め、9カ月かけて日本全国にある有線の放送所631カ所を回った。この努力が驚きの結果をもたらした。評判を聞いたドラマのプロデューサーから「ある歌を歌ってほしい」とのオファーが舞い込んだのだ。その曲こそがのちの大ヒット曲『ひだまりの詩』だった。
それまでずっと夫・隆二が作った曲を歌ってきた2人。他人の曲を歌う事に隆二は多少のためらいはあったのだが……。

(再現ドラマ)
隆二「君の声を活かせる歌だよ、やろう!」
恵美「うん」

恵美が歌ったその曲はたちまち話題になり、180万枚もの大ヒットを記録した。しかし、この華やかな成功が夫婦の運命を狂わせていく。その原因となったのがヒット曲の呪縛だ。
ヒット以降、しばらくはツアーや曲の制作を続けたものの、隆二は一度もヒット曲を書く事ができないまま。気がつけばル・クプルは一発屋のレッテルを貼られていた。すると、家庭での隆二に変化が起こった。

(再現ドラマ)
隆二「おい、曲も売れないでこれからどうしていく気なんだ!」
恵美「そんなの、私にだって分からない……」

隆二は、口を開けば仕事の不安を恵美にぶつけるようになっていった。

恵美「やっぱりあの、危機感がすごかったのかなと思います。毎日怒っているみたいな感じで……」

そしてあることがきかっけで夫婦に完全に亀裂が入ってしまう。それは恵美のソロ活動だった。
ル・クプルの停滞を心配したスタッフが、恵美にソロ活動を提案したのだが、それが隆二の逆鱗に触れてしまう。

(再現ドラマ)
隆二「お前、ソロなんかで本当に成功すると思ってんのか? 俺がいないのに売れるわけないだろ!」

だが少しでもル・クプルのためになるのであればと考えた恵美は、ソロで『カモミール』という洋楽カバーアルバムを発売した。
するとこれが、香港でヒットを記録したのだ。恵美の癒やしの歌声は大ヒットし、CDショップやラジオチャートで軒並み1位に。更に香港だけでなくアジア全体のヒットにまでなった。外国人としては異例の累計35万枚を売り上げ、恵美はソロ歌手として大成功を収めていった。

そしてこの成功が隆二を更に逆上させる。

  1. 1
  2. 2
  3. 3