巨ス大ーパーもTPPもハメられていた 飲み込まれた経済編

現在、日本政府はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加をめぐり、粘り強い交渉を重ねている。TPP交渉にはアメリカや日本、オーストラリアなど12か国が参加しており、農林水産業、自動車産業、知的財産など幅広い分野で経済の風景が大きく変わる。
「日本政府は米、牛肉・豚肉、乳製品、麦、砂糖の5品目を"聖域"と位置づけたものの、TPP交渉はアメリカ主導で引きずられてしまっています。甘利明TPP担当大臣は"聖域を守る"という約束を反故にし、牛・豚の関税を引き下げ、米を輸入拡大する方向で調整に入りました」(民放局政治部記者)

〈米国に追従し合意急ぐ必要ない〉(6月26日付愛媛新聞社説)、〈TPPで影響を受ける国内農業の足腰は弱っている〉(6月27日付信濃毎日新聞社説)など、全国のメディアから厳しい批判の声が上がっている。
「TPPについては北海道庁がレポートを出しており、北海道新聞もきちんと報道しています。それらの資料を見る限り、TPPを導入すれば北海道の酪農農家は壊滅してしまうでしょう」(前出の青山氏)

今問題となっているTPPだけではない。貿易や流通など、戦後の日本はアメリカ型の経済システムの導入を余儀なくされてきた。それを象徴するのが、"大型スーパー"の導入だ。
「中内㓛は57年にダイエーを創業。巨大スーパーマーケットに日本人は慣れ親しみ、全国津々浦々に判で押したように同じ店舗が並ぶことになりました。大型スーパーの登場により、輸入品があふれ、街の商店は軒並みつぶれ、競争激化を強いられたのは事実です」(前出の政治部記者)

中内氏は62年に「国際スーパーマーケット大会」の日本代表としての本場のスーパーマーケットを見学して衝撃を受け、ダイエー拡大路線を決意したというが、これにも裏があった。
「実はこのとき、中内氏は向こうの食品業界などの大物から派手な接待を受け、"ナカウチを全面支援する"という密約を取り付けていた。だからこそ、ダイエーの拡大路線を一気に実現できたんです」(前同)
アメリカ式の市場経済を良かれと思い、そのまま輸入した経済人の戦略は果たして正しかったのか。

日本の生産年齢人口(15~64歳)は95年にピークを迎え、翌96年から減少が始まる。巨大マーケットが右肩上がりで、いつまでも伸び続けるわけではない。
「結局、時代に取り残されたダイエーは90年代後半から経営危機に陥り、のちにイオングループの傘下に入って救済されました」(全国紙経済部記者)

人口減少、とりわけ生産年齢人口の頭打ちは20年前の時点で明らかに見えていたにもかかわらず、政府も日本企業も時代の変化に対応しきれていない。
そもそも、人口も国土もアメリカとはまったく違うのだから、イケイケドンドンで成長を目指すアメリカ式の行き方ではなく、成熟した国家としての営みが求められているのだ。

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