女優陣が惜しげなく肌を披露

この作品の大ヒットを受けて、深作&錦之介コンビで製作されたのが『赤穂城断絶』(78年)だ。
「深作監督は普通の忠臣蔵にしたくなかった。そこで錦之介が吉良役、金子信雄が大石役という配役を考えたと聞きます」(同)

だが、実際のキャストはその反対となった。
「大石内蔵助を演じるのが念願だった錦之介は吉良役を受け入れられず、むしろ王道の忠臣蔵を望んだといいます」(同)

その複雑な状況が、この作品のミソである。
「『柳生一族~』の時点で、深作監督と錦之介には軋轢があったといいます。『赤穂城~』はぜひ、現場の緊張感を想像しながら見てください」(ミゾロギ氏)

東映と並ぶ時代劇の宝庫に大映がある。そのスターといえば勝新太郎だ。
勝新の代表作『座頭市』シリーズを楽しむには、第1作にして最高傑作の呼び声も高い『座頭市物語』(62年)から見るべし。天知茂演じる剣豪・平手造酒との友情を描いている。
「初期の作品は、座頭市がすべてを達観したヒーローになっておらず、人間的な葛藤もあります。それがまた魅力です」(藤木氏)

勝新は67年に勝プロを興し、積極的に夢の共演を実現させていく。
『人斬り』(69年)では日活の石原裕次郎、黒澤映画の常連・仲代達矢、さらに俳優活動もしていた作家・三島由紀夫が共演。勝と三船の共演作もある。
『座頭市と用心棒』(70年)だ。あの『用心棒』『椿三十郎』の主人公を彷彿とさせる浪人が、座頭市と対決する! 大映にはもう一人、市川雷蔵がいた。代表作「眠狂四郎」シリーズの中から第4作『眠狂四郎女妖剣』(64年)がオススメだ。
「このシリーズは途中からエロス路線にシフトします。これは、その第1弾。大映女優陣が惜しげもなく肌を露出します」(藤木氏)

時代劇スターは男ばかりではない。昭和の歌姫・美空ひばりは各映画会社で多くの作品に出演している。
松竹作品『七変化狸御殿』(55年)は、多数製作された「狸御殿」もののオペレッタ喜劇の一作だ。芸達者な出演陣の歌や踊りを理屈抜きに楽しみたい。

現代のスターが主演した作品も1本紹介しておこう。
木村拓哉が失明してしまった若き侍を演じた『武士の一分』(06年)だ。
「山田洋次監督が、"キムタクは何を演じても同じ"という評価を一掃する作品に仕上げています。キムタクの妻役の檀れいの美しさだけでも見る価値あり」(ミゾロギ氏)

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