小錦の足音が"ドン"と鳴り…

――"殴られて、蹴飛ばされる"といえば、先日、宮城野部屋の熊ヶ谷親方が、付き人を金属バットで殴った傷害容疑で逮捕されました。"しごき"と暴力の線引きは、どう思われますか?

曙 定義は難しいけど、ひと言で片づけるなら、"稽古の時間以外の体罰は、すべて暴力"ということ。そりゃ自分も、ずいぶんと殴られた記憶はあります。悪いことをしたら、親方に叩かれるのは当たり前のこと。辛かったけど、それがなければ、自分は横綱になれなかったと思う。"強くなってほしい"という思いからか、ただの暴力でやってるかは、見れば分かります。

――では、曙さんは稽古でのしごきはなくならないと。

曙 それがなくなると、本当に強い力士は出てこないと思います。根性で強くなるという部分が、非常に大きいスポーツなので。

――厳しさが、相撲取りを強くする、と。

曙 それと、僕らの時代と違うのは、最近は巡業へ行っても試合をやるだけで、クタクタになるまで稽古をやらされなくなったということ。毎日、髪の中まで砂だらけでやってきたものを、今では、巡業をバカンスと勘違いしてる力士もいるでしょ!?

――巡業も楽じゃないんですね。

曙 巡業中、トイレに行ってるだけなのに、すぐに館内放送で呼び出されるんです。"曙関~、曙関~、今すぐ土俵まで来てください"って(笑)。ほんと、昭和の親方は怖かった~。

――地獄の果てまで追いかけて来そう!

曙 よく、武蔵丸と巡業中に話していたんですよ。「小錦さんが疲れているから、今日はぶつかり稽古ナシだな」って。そういう日に、会場の出入り口から"ドン! ドン!!"って小錦さんの足音が聞こえてきて、ぶつかり稽古をすることに……こうなりゃ、地獄ですよ。2人で"どっちが先に死ぬ?"って相談して(笑)。

――最後に、今後の相撲界、プロレス界へ、曙さんが望むことはありますか?

曙 相撲でいえば、もっとファンサービスを。力士と、お客さんの距離がもっと近くなることが、今後のために大切だと思いますね。プロレスでいえば、客席の居心地を良くするべき。パイプ椅子も、ひな壇の席もお尻が痛くなるし、お客さんがゆったり観られるスペースを作ってほしい。相撲みたいに、マス席があればいいのに……。力士たちも「プロレスを観に来たい」って言うけど、パイプ椅子じゃ狭いんですよ(笑)。

力士もレスラーも、今こそ奮起せよ!

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2