史上最低の東大中退ライターうっかり馬之助 酔いどれギャンブル奮戦記
「富中馬券」の破壊力


以前、とある焼き鳥屋に毎日のように通っていた。マスターとそこに集まる常連客たちの愛すべきキャラクターに惹かれ、7年ほどやっかいになったのである。

常連客には競馬ファンが多く、金曜日には銘々が競馬新聞や夕刊紙を持ち寄り、土日のレース予想に熱が入った。また、6人ほどで1000円ずつ出し合い、集まった6000円で馬券を購入したが、結果は芳しくなかった。ただ一度を除いては――。

 あれは2008年の新潟記念。1着に16番人気のアルコセニョーラ、2着に2番人気のマイネルキッツ、3着に14番人気のトウショウシロッコが来て、3連単102万8690円、3連複11万9080円という超高配当が出現し、3連複を100円獲った。6人による共同購入だから、一人につき2万円弱が分配された。たいした金額ではないが、みんなで買った馬券のせいか、嬉しさはひとしおだった。

いつもはダメなのになぜ大当たりしたのか。それは、その頃、みんなで決めた新しい攻略法のおかげだった。

6人のなかに人望の厚く、競馬の上手な70歳ほどの先輩がいて、その人が提案した馬番「1、4、5、7、11の3連複5点ボックス馬券」を1000円は必ず購入することに決めたのである。縁起の良さそうな数字だし、内枠が多いし、いかにも的中しそうに思えた。

「富中馬券(焼き鳥屋の名前を富中と言った)」を取り入れてから数カ月後に、新潟記念を当てたのだが、やっかいなのは、この馬券を一人だけで購入することもあったのだが、なかなか巧くいかないのである。一度、3連複で数万円儲けたことがあるが、あとは悩ましいことばかり。買うとこないし、買わなければくる。

後者の例で最悪だったのが、大好きな川田将雅が1着にきて富中馬券で決まり、3連単が100万円ほどの高配当になったとき。配当が発表されたとき、アタシはウインズのフロアに倒れそうになった。

何度も悔しい思いをした富中馬券だが、馬券仲間のぬくもりが感じられる忘れられない馬券術である。いまでも時折、購入するが、この数年、高配当では的中していない。
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