8割以上も減少した自民党員

さらに現在、交渉が大詰め段階を迎えているTPP(環太平洋経済連携協定)も、その引き金を引く一因となるという。
「TPPは、アメリカにとって国益を拡大する悲願の政策。にもかかわらず、安倍首相は担当する甘利明経済財政政策相に対し、"譲歩し過ぎないように"と檄を飛ばしていますからね」(前出の鈴木氏)

長期政権を目指す安倍首相にとっては、かつての「中曽根-レーガン」、「小泉-ブッシュ」よろしく、"日米蜜月"が必須条件なのは永田町の定石。ところが、安保法案成立後の懸念とTPPでの軋轢がある安倍政権においては、もはや、その関係は崩れているのだ。

「かつて、橋本龍太郎元首相が、日本の財政再建目的で米国債売却を示唆したところ、国益を失うと判断したアメリカが裏工作を行い、失脚に追い込んだのは公然の秘密です」(前同)

そして現在は、今年8月に、アメリカが日本政府の電話を盗聴していたことが、内部告発サイト『ウィキリークス』で明らかになったように、
「アメリカは日本の政府や要人に関する膨大な情報を蓄積しています。スキャンダルを流すことで政治家を交代させることなんて、たやすいんです」(同)

アメリカが本気を出せば、安倍首相はひとたまりもないということだが、それに加えて、党内からも火種が噴出。ある自民党中堅議員は、「安保法案成立は、"安倍降ろし"の号砲になる」と断言するのだ。

その最大の理由が、支持率低下だ。第2次安倍政権発足時は60%もあった支持率が、最近では3割台にまで急落。不支持が支持を上回る調査結果もある。
「ピーク時の1991年には550万人近い党員数を誇った自民党ですが、最近ではその2割にも満たず、90万人を下回っているんです。組織力は往時と比べるべくもない今の自民党にとっては、国民の支持こそが最大基盤。野党再転落を防ぐには、支持を得られない安倍内閣には退いてもらうほかない」(前同)

支持率だけでなく、警察発表で3万人、主催者発表で12万人が国会を包囲するなど、安倍首相が敬愛する祖父・岸信介元首相が招いた60年安保闘争と同様の混沌とした状況となっている。そうは言っても、安倍首相は自民党総裁選で無投票再選したばかり。
「アメリカとの関係もあり、安保成立までは安倍さんでいくというのが、統一見解だった。ただ、これからは安倍さんでいく必要はない。これ以上支持率が下がるようなことがあれば、来夏の参院選で惨敗する可能性が高い。選挙前に"安倍カラー"を薄めておく必要がある」(同)

アメリカのみならず、党内からも見放された安倍首相の政権維持は、もはや不可能なのだ。

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