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心に沁み入るメロディーが眠りを誘う

赤ちゃんのころ、母親、祖母に子守唄で寝かしつけられていた。いま、自分の子どもに歌って聞かせている――なんて人は、いまどきめったにいないと思うけれど、昔ながらの子守唄にはなぜか、心落ち着かせ、穏やかにする力があるみたい。

貧しさゆえ、口減らしのために奉公に出されて子守りする――。そんなときに歌うのは、背中の子どもを眠らすために歌うというより、自分の境遇を憂い、遠く離れた親を想う唄――。あんまり歌ったことなくても、聞いたことがなくても、せつなくも懐かしい気持ちになるのは、そんな時代に生きた遺伝子の記憶が呼び覚まされるからかもしれません。

今回は勝手ながら、眠りの女王ヒサコが、個人的に好きな子守唄をご紹介。詩もメロディーも心に沁みてきて、涙がひと筋ツー……いつの間にか眠りに落ちてゆく鎮魂の子守唄。眠れない夜にぜひ、口ずさんでみて。


《五木の子守唄》熊本県球磨郡五木村

おどま盆ぎり盆ぎり 盆から先ゃおらんと、盆が早よ来りゃ、早よ戻る
* 私の奉公はお盆まで。お盆から先はいません。お盆が早く来たら、故郷に早く戻れる

おどまかんじんかんじん あん人たちゃあよか衆(し) よか衆よか帯 よか着物(きもん)
* 私は身分が低い。あの人たちは裕福な人たち、いい帯、いい着物を着て

おどまうっ死(ち)んだちゅうて、だいが泣いてくりゅうか。裏の松山 蝉が鳴く
* 私が死んで、だれが泣いてくれるだろうか。裏の松山の蝉が鳴くだけ

おどまうっ死(ち)んだら、道ばた埋(い)けろ。通る人ごち、花あぐる
* 私が死んだら、道ばたに埋めてほしい。通る人ごとに花をくれるだろうから

花はなんの花 ツンツン椿。水は天からもらい水
* 花はなんでもいい、道ばたの椿で。水は天からの雨をもらえばいい


五木の子守唄は、いろいろな人が歌っています。YouTubeに上がっているものも。ぜひ、探してみて!

山崎ハコ/1975年デビュー。フォーク全盛時代から活躍するシンガーソングライター。暗く、鋭く、訥々と歌う中に哀しみがにじみます。

李香蘭/戦前、日本人でありながら中国人歌手、女優として活躍。戦後は国会議員も務めた山口淑子。正当派の歌声です。

石川さゆり/さすが演歌の女王だけにうまい! ちょっとうますぎるかもしれません。

桃山晴衣/各地の子守唄や古謡なども調査・研究している三味線シンガーソングライター。これが原型に近い五木の子守唄なのか。

*各地で歌われてきた子守唄は、NPO法人子守唄協会が蒐集していて、ホームページ内の「子守唄資料室」で公開しています。故郷の子守唄を知りたい方は、こちら:http://www.komoriuta.jp/cover.html

(取材・文/眠りの女王ヒサコ)

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