異例のシーズン中人事の狙い

「読売新聞東京本社の山口社長は、現在、ナベツネさんに次ぐ読売グループのナンバーツーの実力者。この山口社長が、川相ヘッドの力量を高く買っているらしいんです」(事情通)

また、さらに別な秘められた狙いがある、と言うのはベテラン記者だ。
「巨人は5月、それまで原沢敦球団代表が兼務していたGM兼編成本部長に、読売新聞東京本社の堤辰佳運動部長が就任すると発表した。異例のシーズン中の人事だが、これは、今後はGM職を独立させて権限を強化し、フロント主導でチーム作りをするという意思の表れだ」

さらに続けて、
「フロントが求めるこれからの巨人軍監督は、コントロールしづらい大物や元スター選手じゃない。野球に精通しながらも、球団の意向を汲む人材なんだ」

こうした事情が明らかになれば、前出のように今季、原監督にFA戦略などに関する相談が一切なかったことも理解できるだろう。しかしながら、"川相巨人監督説"を聞いたある巨人OBはこう首をかしげる。
「いくらなんでも、地味じゃないか……」

今季の巨人は、10月4日のシーズン最終戦で、3年連続300万人の観客動員を達成。ドームでの1試合平均の観客動員数は実に4万4000人を超え、リーグ優勝は逃したものの、人気は衰えを見せていない。これを裏返すと、川相監督で、これだけの集客が見込めるのかという不安材料ともなってくる。そういう意味で評価されるのが江川卓氏だという。

スポーツライターの江尻良文氏が解説する。
「江川氏のファンは多いですからね。巨人監督になるのは非常にリスクを伴うけど、現在の江川氏は泥をかぶってもいい立場だから、一番収まりがいい。彼自身ももう還暦だし、おそらく今回がラストチャンスでしょう」

しかし、前出の黒江氏はこう語る。
「江川は評論家として活動しているけれど、グラウンドに降りてこない。監督や選手とコミュニケーションを取らないで解説する人物が、監督としてうまくやっていけるか、疑問だね」

いずれも帯に短し襷に長し、すべての条件を満たす人材は見当たらないのが現状と言える。前出の江尻氏が言う。
「原監督がCSに勝って日本一になったら続投でしょう。"日本一を土産に退任"はない。長嶋さんも2000年の王さんとのミレニアム対決を制して日本一になったとき、辞めるつもりだったと思いますが、続投要請を断れませんでした」

川相ヘッドの昇格、江川氏の抜擢、そして原監督の続投、という三択に絞られた来季の巨人監督。CS、そして日本シリーズの裏で繰り広げられる壮絶な暗闘の勝者は、誰になるのか。

そして、その指揮官は、現在、重大な局面を迎えた巨人軍を再建することはできるのだろうか――。

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