安倍が進次郎へ"報復人事"
しかし、その安倍首相をもってしても一筋縄でいかなかったのが、"政界のプリンス"こと、小泉進次郎氏だった。
「安倍政権は、進次郎氏の国民人気の高さを利用して支持率を底上げすべく、復興大臣もしくは副大臣として入閣させ、陣営内に取り込もうとしていました」(同)
しかし、進次郎氏は9月末、地元紙『神奈川新聞』のインタビューで、〈(安保法案審議で国民の支持が得られなかった)いくつかの原因は自民党自身にある。国民も、党に、緩みや驕りを感じているのではないか〉と、痛烈に安倍政権を批判していたのだ。
「政権批判をすることによって、進次郎氏はやんわりと(入閣要請の)"断り"を入れたんです。これは進次郎氏の絶妙なまでの舞台回しです。つまり、安倍首相に直接断るのではなく、メディアを通じて入閣を断ったことになります。まずは、進次郎氏が首相から一本取ったわけです」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)
確かに、安倍首相に直接、辞退を申し入れたら角が立つところを巧みにかわしてみせたのだが、それで、黙って引き下がる首相ではなかった。
「安倍首相は不愉快な思いを持ったでしょう。だからこそ、"入閣したくないのなら、自分の力を試してみろ!"と突き放し、進次郎氏を党の農林部会長に起用したんです。さすがに進次郎氏も、2回は断れません」(政治評論家の浅川博忠氏)
農林部会長は今後、TPP合意による農産物の関税の引き下げで、高まっている農家の反発を一手に引き受けなければならない過酷なポストだ。
「進次郎氏が自身で"誰よりも農業政策に詳しくない"と語っているように、決して適材適所の人事ではありません。安倍首相による明らかな"報復人事"ですよ」(前出の中堅議員)
前出の浅川氏は今回の一連の攻防を受け、こう語る。
「これで進次郎氏の"安倍離れ"は加速し、安倍首相と"小泉親子"は、ただならぬ関係になったと言えるでしょうね」
このように今、永田町では、"安倍VS 小泉親子の仁義なき戦い"が勃発したと囁(ささや)かれているのだ。そう、安倍政権に政界でノーを突きつけているのは進次郎氏だけでなく、父・小泉純一郎元首相もなのだ。
「小泉元首相は今や、反原発を掲げ、川内原発(鹿児島県)に次いで、伊方原発(愛媛県)などの再稼働を急ぐ安倍政権批判の急先鋒となっています」(前出の政治部記者)
事実、小泉元首相は、9月に06年の首相退任以来初めて新聞社のインタビューに応じ、〈(原発の安全性は)すべてウソ。全然、クリーンじゃない。原発は環境汚染産業なんです〉と、改めて原発再稼働にひた走る安倍政権を批判している。一方の進次郎氏も、原発再稼働に関して、講演会で
「どう原発をやめていけるのかという方向性で考えていくべきだ」
と、安倍政権の再稼働ありきの路線に異を唱えている。

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